∀ 一家惨殺事件-5
* * *
お父さんとお兄ちゃんがソファーでテレビをみていました。
お母さんはキッチンであらいものをしていました。
おばあちゃんはとなりの部屋でねていました。
お姉ちゃんとぼくはごはんを食べるテーブルでカードゲームをしてあそんでいました。
いきなりぼくの知らないおとこのひとが入ってきました。お父さんがおとこのひとのそばに行っていいました。
「***くんじゃないか、勝手に入って、いったいどう」
お父さんがいいおわる前にお父さんは血をながしてたおれました。
お姉ちゃんがキャーとさけびました。それからはあっという間でした。
次に刺されたのはお兄ちゃんでした。おとこのひとがソファーにお兄ちゃんをおしたおして体中を刺しました。お母さんとお姉ちゃんといっしょにぼくもさけびました。おとこのひとはにげるお母さんをキッチンで刺しました。となりの部屋にいるおばあちゃんも刺されました。
おとこのひとはぼくとお姉ちゃんを見ました。赤くてとてもとても怖い顔でした。ぼくも刺されるとおもって怖くて、お姉ちゃんにしがみつきました。おとこのひとがまたお父さんを刺しました。
お姉ちゃんがさけびながらぼくをふりほどいて、おとこのひとのところにいきました。ぼくはお姉ちゃんを呼びました。でもお姉ちゃんとおとこのひとぐちゃぐちゃにもみ合ってぼくのことをわすれていました。
おとこのひとがお姉ちゃんの上にのってお姉ちゃんをいっぱい刺しました。お姉ちゃんは目をあけたままうごかなくなりました。おとこのひとが死んだお姉ちゃんにキスをしました。ぼくは怖くて怖くて泣きじゃくっていました。
おとこのひとがぼくの方にあるいてきました。ぼくはいよいよ刺されるとおもって怖くていっしょうけんめいお願いしました。
「いやだ、たすけて、たすけて、こわい、ころさないで、刺さないで」
おとこのひとが赤い手でぼくのあたまをなでました。
「坊主、死にたくないか?」
ぼくはうんうんとうなずきました。
「そうか。でもな、兄ちゃんはお前を殺そうと思ってないけど、お前は、兄ちゃんより怖い人たちにこれから殺されちゃうんだよ」
意味がわからなくてぼくはなにもいえませんでした。
「兄ちゃんな、これから坊主の姉ちゃんと同じところにいくために死のうと思うんだよ。そしたらな、誰が姉ちゃんたちを殺したんだってことになっちゃうんだよ、わかるか?」
ぼくは首をふりました。
「これからな、お巡りさんがくるんだけどな、坊主だけが生きてると、坊主が殺したんだろってことになっちまうんだよ。そしたらな、坊主はお巡りさんとか色々な怖い人に、いっぱい痛いことされて殺されちゃうんだよ、わかるか?」