うちの愛猫-5
◇ ◇ ◇
「……すいません、なんか無理矢理引き留めちゃって」
あたしは、気まずそうにソファーに座っている久留米さんに謝った。
帰ろうとする久留米さんを無理矢理家に上がらせ、アイスコーヒーやらカステラやらふるまい始めたのは、言わずもがなあたしの母である。
さらにテーブルの上には、あたしが明日のおやつに食べるつもりだった宇治抹茶大福が久留米さんの前に置かれていた。
その気合いの入れよう、ヒいてしまうんですけど……。
そして母は、キッチンから人差し指をクイクイ動かし、あたしを呼び寄せると、
「あんた、なかなか上玉見つけてきたじゃない。
絶対モノにすんのよ!
先に既成事実を作ったら逃げられやしないんだから」
と、やや血走った目であたしに耳打ちした。
公務員ってだけで真面目、安泰のイメージを持つ母にとって、久留米さんはまさに理想の結婚相手に見えたらしい。
あたしよりがっついている母に、
「ちょっと、久留米さんはそんなんじゃないんだから」
とコソコソ否定した。
だけど、母は聞く耳持たずに、居心地悪そうに座る久留米さんのそばに駆け寄ると、
「じゃあ、“ごゆっくり”ね。
私もう寝るから」
と言い残し、サッサと自室に閉じこもってしまった。