うちの愛猫-4
久留米さんは、ポカンと口を開けたマヌケ面のあたしにクスッと笑いかけると、
「……ま、そういうわけだから、俺はこれで失礼するわ」
と、右手を小さく上げた。
……そこまで言われると家の中に招き入れづらいじゃん。
このまま帰らせるのか、と残念に思って心の中で舌打ちしていると、突然玄関のドアがガチャリと開いて
「玲香、何騒いでるの?」
と、母が顔を出してきた。
さっきのあたしの大きな声を聞きつけて、母は様子を伺いに来たらしい。
母はすぐさま久留米さんを見てから、
「玲香、この方は?」
と、あたしに訝しげな顔を向けた。
そういえば、“飲みに行ってくる”ってだけで誰と飲むのかなんて言っていなかった気がする。
母の少し怖い顔にビビりながらもあたしはおずおずと、
「あの……、職場で一緒の久留米さん」
と、久留米さんを紹介すると、彼は小さく頭を下げ、
「どうも、はじめまして」
と少し緊張した口振りで挨拶した。
すると母は怖い顔から一転し、みるみるうちに頬を紅潮させ、
「あらあら、ってことは県職員さんなのね!」
と、あからさまにテンションをあげ久留米さんに握手を求めていた。
うわあ、なんて露骨な……。
彼が県職員と知ってあからさまに上機嫌になった母に、思わず苦笑いになった。