うちの愛猫-2
10分もしないほどの距離を歩いたあたし達は、見慣れた家の前で立ち止まった。
門灯の周りは小さな虫が飛び交って、その羽音が聞こえてきそうなくらいの閑静な住宅地の一角。
あたしは久留米さんに向き直ると、深々と頭を下げた。
「こんなとこまでわざわざ送ってくれてありがとうございました!」
「いや、半ば俺が強引にそうしただけだから。
じゃあ、おやすみ」
久留米さんは微笑んでから小さく手を上げ、あたしに背を向けた。
すぐさま歩き始める彼の背中がなんだか名残惜しい。
あたしの誘いに付き合ってくれ、奢ってもらって、家まで送ってくれて、このままはいサヨナラなんて、申し訳なさすぎる。
「あの、よかったらうちに上がってお茶でも飲んでいって下さい」
気付けばあたしは彼の背中にそう言葉を投げかけていた。
すると久留米さんはゆっくり振り返り、
「気持ちだけもらっとく。
大体、こんな時間に男が上がり込んだら親御さんに心配かけちゃうだろ?」
と、笑いかけた。