うちの愛猫-13
「やだ、久留米さんてば。
めいこじゃなくてメイですよ」
名前を間違った久留米さんに向かってクスクス笑った。
彼はあたしがそう言うと、なぜかヤバいといった顔をして、右手で口元を押さえていた。
しかしあたしが彼をジッと見ていることに気付くと、すぐさまいつもの調子に戻って、
「俺、何ボケてんのかな。
名前間違ってごめんな、メイ」
と頭を掻いていた。
名前間違えたくらいでそんなヤバいって顔しなくてもいいのに。
あたしは彼の少し挙動不審な様子がかえって気になって、しばらく彼の顔をジッと見つめていた。
彼はそんなあたしの視線から逃れるように、
「今日は楽しかった。誘ってくれてありがとう」
と、頭を下げると、そそくさと玄関を出て行った。
なんで、名前間違ったくらいであんなに気まずそうな顔したのかな。
あたしは、彼が閉めた玄関のドアを見つめながら首を傾げた。
挙動不審な久留米さんも不思議だけど、今日一番驚いたのはやっぱりこの子だ。
あたしは腕の中に収まっているフワフワの物体に向かって、
「あんた、なんで久留米さんにあんなにベッタリだったの?」
と、訊ねてみた。
けれど、彼女はあたしの腕の中で呑気に喉を鳴らすだけだった。