〈渇きゆく大地〉-12
『美津紀はのう…夏帆の血縁にあたるんじゃ……』
その名前を聞いて、医師の眉はピクンと跳ねた。
数年前、サロトが夏帆と呼ばれる少女を連れてきて出産させ、程無くして姉妹だと言われた真希と芽依も妊娠していると、タムルに連れてこられた。
『この美津紀の姉の麻里子と瑠璃子という奴は、がさつで馬鹿でワシは嫌いじゃったが、春奈という姉はとびきりの美少女でのう……早く会いたくて仕方ないわい……』
医師や看護婦達の笑顔が少しだけ引き攣っていた……執着心の強いサロトは、可愛い少女に姉妹が居ると分かれば、その全員を手に入れないと気が済まない質だ……数年前の夏帆の悲劇の以前にも、サロトに目を付けられた姉妹が居たし、その後にも悲劇は続いていた……そして、少女の宿した〈命〉は、この医師達が取り上げていたのだ……。
『……じゃあ……春奈ちゃんも、此処に来る事になりますかね?』
医師の問いに、サロトはニヤリと笑った。
目の前で能天気に座っている少女の一族の哀しみを憂いてみても、医師にもそれは止められやしない。
それに、少女が妊娠してくれなければ、賄賂が少なくなってしまうのは過去に学んだことだ。
『……あれじゃな。春奈も実際に会ってみないとのう?嫁にするかどうかは、それからじゃて』
鼻を膨らませたその顔は、性行為が不能になった美津紀から春奈に興味を移した証……数年前、夏帆の妊娠が発覚した時と同じ顔だ……。
(早く新しい便器を連れてこい)
(調教しがいのある山猫が……欲しい……)
(嫁じゃ……ワシの可愛い嫁が来るんじゃあ……)
虐待と姦淫に明け暮れる大地の畜人達は、腹を空かせて待っていた。
新鮮で美味い脂の乗った美肉の到着を………。