一生分の恋-6
「ああ....」
「って!アタシをからかうならここまでにしてくれ!」
「えっ?」
「アタシを少し持ち上げておいて後から落とす....よくあるパターンだな!」
「いい加減にしろよ!自虐的にも程があるだろ!」
「だったら聞かせてくれ!どうしてアタシなんだ?」
「どうしてって....それは....」
「ほらな!やっぱり言えないだろ?それとも茉莉菜の代わり?それならそうと....」
「バカヤロ!怒るぞ!俺が好きなのは亜梨紗だ!茉莉菜じゃない!」
「だったら聞かせてくれ!アタシのどこが好きなのか!ごまかさずに!でないと信じられないんだ!なんでアタシなんかを....」
「亜梨紗は美人で....」
「茉莉菜と双子の姉妹だからな!」
「優しくて....」
「こんなアタシのどこが?」
「俺は知ってるよ....亜梨紗の優しいところ....さりげなく茉莉菜の事..気遣ってただろ!そして俺の事も......」
「っ......」
「一昨日....亜梨紗に告られてずっと亜梨紗の事考えてた....亜梨紗の事どう思っているのか....簡単に答えが出なかった....どうしても茉莉菜の事が引っかかって....俺が亜梨紗を通して茉莉菜を見てるんじゃないかって....亜梨紗を傷つけてしまうんじゃないかって....俺は本当に茉莉菜の事....想い出に出来たのかなって....でも俺....亜梨紗の事諦める事出来なかった....亜梨紗と再会して1ヶ月だけど....想い出なんて数える程しかないけど....想い出されるのは亜梨紗の事だけなんだ......茉莉菜や他の女の子の事なんて浮かんで来なかったんだ......それで....俺は亜梨紗の事が好きなんだって気づかされた....直ぐに亜梨紗に伝えよう....そう思った.....でもその日夢を見たんだ....茉莉菜の夢....久しぶりだった....」
「.....えっ......」
「茉莉菜と初めて会話した日の夢....リハビリしてる所を茉莉菜が覗きに来て....看護師さんにリハビリ室に招き入れてもらって初めて交わした会話....茉莉菜から聞いた事ある?」
亜梨紗は小さく頷いた。
「起きたら愕然としたよ....俺..茉莉菜の事全然想い出に出来てない....こんなんじゃ亜梨紗を悲しませるって....だから昨日一日悩んでた....亜梨紗を悲しませるなら断ろうって....そのほうが亜梨紗を傷つけないんじゃないかって....でも....そんな決断なんて出来なかった....だって俺....亜梨紗の事好きになってた....亜梨紗と一緒にいたかった....一緒に笑っていたかった....だから決めたんだ....亜梨紗と一緒にいようって....これからは亜梨紗の事だけを見ていこうって....そしたら....今朝また茉莉菜の夢を見たんだ....」
「........」
亜梨紗は何も言わなかった。
「あの時と同じように....茉莉菜が言うんだ....純君が好き!私とつき合って!って....その時、俺は迷わず答えたんだ....ゴメン!俺、亜梨紗が好きだから茉莉菜とはつき合えない!って!」
その時、亜梨紗の目から涙が零れ落ちた。
「俺....亜梨紗が好きだ....亜梨紗しか見えない....もしも....亜梨紗を不安にさせたら遠慮しないで言ってくれ....俺が悪いなら何度でも謝るから....だから....亜梨紗がこんな俺でもいいっていうなら....俺とつき合ってくれ!」
亜梨紗の目からは涙が溢れ出し、拭いても拭いても止まらなかった。
「亜梨紗?」
「ヤダ....止まらない....」
亜梨紗が何度も涙を拭いていると
「純君....後は私に任せて!もういいから今日は帰って!」
離れた所で様子を見ていた瑞希ちゃんが亜梨紗に駆け寄って来た。
「えっ?」
「えっ?じゃ無いわよ!フッた女が泣くところを見てるなんて悪趣味なのにも程があるわよ!」
そう言って俺を睨んだ。
「誰が亜梨紗をフッたって?」
「えっ?だって....違うの?」
瑞希ちゃんは交互に俺と亜梨紗の顔を見ていた。
「瑞希ちゃんには、亜梨紗がフラれる選択肢しかなかったんだ....」
「そんな事ないよ!」
瑞希ちゃんは慌てて否定したが
「瑞希がアタシの事どう思っているかわかってしまった....」
亜梨紗は拗ねたように横を見た
「ちょっと!亜梨紗!違うから!違うからね!」
「どうだか!」
「ゴメン!本当にゴメン!」
瑞希ちゃんは両手を合わせて謝っていた。
「亜梨紗!その辺にしとかないと友達をなくすぞ!」
「わかったよ!ゴメンね瑞希!」
「あぁんもう驚かせないでよね!」
「ゴメン......ってなんでアタシが謝るんだ?」
「でも....良かったね!」
「うん....」
亜梨紗は嬉しそうに頷いた。