幼馴染と-1
やかましい音で目が覚めた。朝に弱い私にこのみがプレゼントしてくれた目覚まし時計が鳴っていた。そいつの頭上を手のひらで叩いて息の根を止める。
寒い。布団の中でぬくぬくしていたい。でもそういうわけにもいかないので、起き上がることにした。
寝巻き代わりのジャージを脱いだところで、違和感に気付いた。
ショーツの中に何かある。
触れてみると、生温かくて硬い何かの感触がした。
「ひえっ」
情けない声を出してショーツを脱ぐと、言い訳できない形状のものが私の股間から生えていた。
間違いなく男性器だった。それもけっこうな大きさだった。平均の大きさなんて知らないけど。
「なにこれ……なんで……」
「お姉ちゃん、起きたの?」
ドアの向こうから妹の声がした。部活の朝練ががあるから、電車通学の私よりも少し早く起きている。
「うん、起きた起きた。もう出るの? いってらっしゃい」
「いっていきまーす」
軽い足音が小さくなっていく。異変に感付かれることはなかったようだ。
改めて自分の股間にあるそれを見てみる。私の性知識に間違いがなければ、これはやっぱり男性器だ。しかもいわゆる勃起という状態になっている。
ショーツを穿くと、先端が裾から飛び出てしまった。間抜けな光景だ。それ以前に気色悪い光景だった。
制服のスカートを穿いてみると、若干膨らみができてしまっていた。歩いていればわからないかもしれないけど、じっくり見られたら気付かれてしまうと思う。
女性器の存在を確認すると、ちゃんとあった。私は女性器と男性器の両方を持ってしまったらしい。
「どうすんのこれ……」
どう考えても隠し通せる気がしない。通学路で、学校で、家で、こんな邪魔な物体をどう隠せというのか。
かといって誰かに相談できるわけない。ばれるまで隠す。それしかなかった。
一応重ね履きでブルマも穿いてみて、それ以外はいつも通り制服を着てリビングに降りた。
母親とおはようのあいさつを交わす。食卓に座って朝食を食べる。カフェオレを飲んで鞄を取りに自室に戻る。家を出る。
意外とばれないものだなと安心したけど、何かが解決したわけでもない。まだ私の股間には男性器が付いている。
すれ違う他人の視線が怖かった。男の人に太ももを見られるのなんて女子高生だから慣れてるけど、頼むからそこから視線を上げないでと祈った。胸は観察してもいいから。
駅のホームに着く。立ち止まるとばれそうなので、おじさん二人が座る長椅子の真ん中に腰かけた。むしろ危ないかなとも思ったけど、無事に電車が来るまでやり過ごせた。
問題は電車内だ。どうにか壁際を確保して、壁の方を向いて立つことができた。
痴漢なんて普段でも御免だけど、今だけはやらないでほしかった。胸なら好き放題触らせてあげるから。触るとそっちがビビることになるんだからね。
とくに痴漢に遭うことも知らない人に男性器を押し付けてしまうこともなく降車駅に到着した。
電車をクリアしても気は抜けない。ここからは私のことをじっくり見る人間がいる。
「おはよーひなちゃん」
思わず体が強張った。振り向くと幼馴染のこのみがいた。
この子だけにはばれるわけにはいかない。今の私の秘密を知ったら、とんでもないショックを与えてしまう。
「おはようこのみ。今日もかわいいね」
「やだもうひなちゃん、恥ずかしげなくそういうこと言う」
普段通り笑えたと思う。声のトーンも申し分なし。体の緊張も和らいできた。
でも鼓動の速くなったのはとまらない。気を抜くわけにはいなかいんだから、どきどきするのはしかたない。悟られなければいい。
「宿題やってきた? あれ最後の問題わからなくて……」
「私もわからなかったー。あとで一緒に考えよっか」
何気ない会話を続ける。しっかりこのみの目を見て話すんだ。それにしてもかわいい子だ。私とは違って女の子らしさに溢れている。
「っ……」
ショーツの中の窮屈さが強くなった。男性器が今までより膨らんでいるんだとわかった。
このみを見ると、私の様子には気付かずまっすぐ前を見て歩いていた。ああ、横顔もかわいい……って、なんか私おかしい。
このみがすごくかわいく見える。いや、もともとかわいいんだけど、胸とかにも目がいっちゃうし、太もももたまらない……やっぱり変だ私。
もしかして心まで男になっちゃってるんだろうか。正確には性嗜好が男になっているのかもしれない。
このみのことを完全に女の子として意識しちゃってる。何気ない仕草とかすっごくかわいい。話しながら微笑みかけられるとどきっとしてしまう。
そう気付くとこのみの顔を直視できなくなってしまって、無理やり視線を外しながらおしゃべるすることになってしまった。
幸いにもすぐに学校に着いたのでよかったけど、ずっとこんな調子でもこのみに気付かれてしまう。
私は身も心も部分的に男化してしまったようだ。うちは女子高だから女の子しかいないのだけど、妙にみんなの顔とか体を凝視してしまう。
何せ女子しかいないので、みんな無防備だ。スカートの中とか隠さずに座ったりする。うっかり生パンの子とか見ちゃったりすると顔が熱くなる。
「ひーなちゃん。ホームルーム始まる前にやっちゃおっか」
このみが私の前の席に座り、プリントを広げた。
ものすごく近い。鼻が当たりそうだ。
それにしてもこのみってまつ毛長いな。目もぱっちりしてるし、肌にもできもの1つない。髪もさらさらで、少し動くだけでいい香りが漂ってくる。
「ん? どうしたのひなちゃん?」
「あ、えっと、考えてた。私ここまでやってみたんだけど……」
もうだめかも私。このみがかわいすぎるよ。