垣間見える過去-1
◇ ◇ ◇
「美味いね、これ」
そう言ってあたしの向かいに座る久留米さんは、ガツガツとホルモンの煮込みを食べ始めた。
あれからあたし達は一旦別れ、再び6時に待ち合わせをして、駅裏の小さな通りにある居酒屋に入った。
一旦家に戻ってからのあたしの気合いの入れようは言うまでもないだろう。
シャワーを浴びて汗を流し、髪もふんわり巻いてみたり、化粧だっていつもの倍の時間をかけた。
こないだ買ったばかりのあたしにしては珍しい、女らしいシフォンの黒いワンピースに、白い半袖のカーディガンを羽織って。
さらには、万が一のためにとお気に入りの下着をつけてしまったし。
鏡に映る自分の下着姿を見て、少しだけ罪悪感が顔を出す。
塁が好きなはずなのに、久留米さんとそういう雰囲気になってしまうことを少なからず期待してしまう自分がいたことが信じられなかった。
今となっては塁の相談なんて単なる名目に過ぎず、久留米さんと二人で飲みに行ける事実に浮き足立っていて、塁があの娘と一緒にいることなんてうっかり忘れてしまいそうになるほどだった。