垣間見える過去-19
捕らぬ狸の皮算用になりつつあった勝負下着も、もしかしたら役に立つんでは?
どうしよう、酔ったフリでもして腕でも組んじゃおうか。
それとも控えめに手を握った方が可愛らしいか。
あたしはハアハアと息を荒くしつつ、唇を一舐めしてから、ゆっくり彼の左手に狙いを定める。
所在なさげに前後に小さく揺れる彼の左手。
前、後ろ、前、後ろ……。
一瞬の動きで彼の左手を掴もうと、タイミングを計る。
……よし、今だ!
あたしは彼の背後から勢いよく右手を伸ばし、久留米さんの手をめがけた。
しかし久留米さんは絶妙なタイミングで、ジーンズのポケットに手を入れ、煙草のボックスを取り出した。
スカッと空を切るあたしの右手。
あたしは思わずバランスを崩し、よろめいてしまった。
「何してんの?」
そんなあたしの下心に気付かない彼は、キョトンと不思議そうな顔をこちらに向けた。
「あ、あの……ちょっとバランス崩しそうになって……」
「そんなヒールの高いサンダル履いてるからだよ」
久留米さんはそんなあたしにプッと笑いかける。
そしてそのまま久留米さんはどんどん先に進んで行った。