結衣の頼みごと(PW4版)-2
「ど、どうしたの?」
「はい、ストレートティ、裕樹これ好きでしょ」
結衣は顔を上げると手に持ったペットボトルを裕樹にふわりと投げた。
「おっと、さ、さんきゅう」
裕樹がぎこちない笑顔を向けると、同じ様に結衣もぎこちなく返した。
「で、コレくれるために来たの?」
「ううん、昨日のこと謝りに…引っ叩いてごめんね」
結衣は再び俯くと、裕樹の思いもしなかった謝罪の言葉を言ったので裕樹は驚いた。
「謝らないといけないのはこっちだよ。昨日は嫌なことしてごめん」
裕樹も頭を下げた。
「もうしない?」
結衣が俯きながら聞いた。
「うん、もうしない。結衣が泣くとこ見たくないし」
「そっか。じゃあ昨日のことはお互いに無しね。もうお互いにウジウジするの止めようね」
結衣がニッコリ笑い、少しだけいつもの調子に戻った。
「お、おう、じゃあ無しで。それをワザワザ言いにきたの?」
裕樹は結衣の心の広さに感謝した。多少はぎこち無くはあるが、結衣のお陰でこれまで通りに戻れるだろう。
「うん。でもそれだけじゃないんだけど…」
「ど、どうしたの?」
若しかしていつも結衣の下着を物色してるのもバレたかと思った裕樹はドキドキした。
「裕樹、あたしの友だちで真弓って知ってるでしょ?ほら去年家にきた騒がしい子」
「ああ、あの子か」
下着のことではなかったので裕樹はホッとした。
「結衣と一緒のテニス部の子だろ。昨日もクラブの時に一緒にじゃれ合ってたじゃないか」
結衣の様子を盗み見た時に、結衣が首を締めていた真弓の姿を思い出した。
「アレを見たの。恥ずかしいなあ」
「結構楽しそうだったよ。それでその真弓って子がどうした?」
「真弓がね、裕樹と付き合いたいんだって」
「えっ?まじ?オレ年下だぞ」
「それは知ってるわよ。去年家に来た時に一目惚れしたんだって。で、どうする?」
「どうするって言われても、今はそんな気が起きないよ」
今は結衣のことで頭が一杯で、他の女のことは考えられなかった。真弓を利用して、結衣のことをふっきればいいのだが、姉に似た真面目な性格が気持ちの整理の付かないまま、他の女といい加減に付き合うことのできない裕樹だった。
「じゃあ断るの?」
「うん、断っといて」
「わかった。そう返事する」