酔ったフリして-1
土曜日に待ち合わせ場所に行くとみんな揃っていた。
「遅いぞ!葛城!」
最初に文句を言ったのは拓弥だった。
「ゴメン......で..今日のメンバーはこれだけ?」
「うん!そうだよ!」
瑞希ちゃんが笑って言った。集まったメンバーは拓弥に亜梨紗、瑞希ちゃんに俊輔(しゅんすけ)に初音(はつね)ちゃんだった。
「ねぇ?純君?誘っておいてなんだけど....良かったの?」
瑞希ちゃんが話しかけてきた。
「えっ?なんで?」
「ほら!あの二人と約束してたんじゃないの?」
「あの二人?ああ....彼女達はそんな関係じゃないよ!」
瑞希ちゃんは俺の顔を見つめた後
「それならいいや....それじゃあ行こう!」
昼食を一緒に食べる約束をして、遊園地内では自由行動する事になった。俊輔と初音ちゃんのカップルは真っ先に消えていった。
「ねぇ!二岡君!向こうへ行こう!」
瑞希ちゃんは拓弥に何事か囁いて離れて行った。
「オイ!拓弥!」
拓弥を呼び止めたが
「悪いな!葛城!そういうわけだから!」
拓弥は嬉しそうに消えて行った。
「瑞希....気を遣っちゃってくれて....」
亜梨紗が呟いた。
「えっ?何か言った?」
「ううん!別に!私達も行こうか!」
「そうだね!何に乗る?」
「定番と言えば....」
亜梨紗は絶叫マシンを見つめた。恥ずかしい話だが俺は絶叫マシンが苦手だった。高所恐怖症っていうわけではなかったが苦手だった。茉莉菜にその事を話した時、意外だって笑われてしまった。
「絶叫マシンって言いたいんだけど....お前苦手だったよな?」
「うん....ってどうしてその事を....」
「えっ?あっ!茉莉菜に聞いたの....」
「言わないでって口止めしたのに....」
「じゃあ....聞かなかった事にしてあげる!それじゃあ行こう!」
亜梨紗は俺の手を掴み歩き始めた。
「ちょっと!どこに行くの?」
「あそこ!」
亜梨紗が指差したのはスパイラルコースターの方だった。
「なんであそこなんだよ!」
「だって!アタシ、茉莉菜から何も聞いてないもん!だからいいだろう!」
「そ....そんなぁ....」
「いいから行こう!」
俺は亜梨紗に引きずられるように歩いて行った。
「えっ?亜梨紗?」
スパイラルコースターに乗る事になると諦めていた俺は亜梨紗が列に並ばないで通り過ぎた事に驚いた。
「お前がどうしても乗りたいんならアタシはそれでもいいんだけど?」
「そ..それは....」
「だったら付いて来て!」
「えっ?どこに?」
「あそこ!」
亜梨紗が指差したのはホラーハウスだった。
「ここならお前も大丈夫だろう?」
「うん....まぁ....」
亜梨紗を見ていると、亜梨紗は笑顔で
「いいから行こう!」
そう言って俺の腕を掴んでホラーハウスに入って行った。
「キヤァァァァ....」
ホラーハウスに入ってすぐに亜梨紗は悲鳴をあげて俺にしがみついてきた。
「アタシ....こういうのダメなの....」
「だったらどうして入りたいって言ったんだよ!」
「だって....ヒィィィィ....」
亜梨紗は俺の腕にしがみついている両手に力を込めた。