酔ったフリして-2
「だぁってぇ....ここなら茉莉菜との想い出が無いって思ったんだもん....」
確かに心臓が悪かった茉莉菜に遠慮して、絶叫マシンやホラーハウスには近寄らなかった。実際はそんなの関係なかったのかもしれないが....その事を訝しむ茉莉菜に絶叫マシンが苦手だという事を打ち明けて大笑いされたのだった....亜梨紗はその事を茉莉菜から聞いていたのだろう....それは亜梨紗の心遣いなのかもしれない....
「キィャァァァァ......ヤダもう....」
走り出そうとした亜梨紗の手を引き寄せ
「走ると危ないよ!」
「でも....イヤァァァァァァ......」
俺にしがみついてくる亜梨紗を見て不覚にも可愛いと思ってしまった。茉莉菜と同じ顔をしているので、元々俺のタイプなのだが今まで亜梨紗にそんな事を感じた事などなかった。ただ..亜梨紗に茉莉菜の面影を重ねている....そんな指摘を否定しきれない自分もいる事は確かだった....
「ねぇ....こんな所....早く出ようよ....」
「大丈夫だよ!俺がいるから!もっと俺を信用して!」
「う..うん....」
亜梨紗は再び俺の腕にしがみついている両手に力を込めた。俺の腕に亜梨紗の胸の膨らみを感じた....一瞬茉莉菜との事が脳裏に浮かんだ....亜梨紗も茉莉菜と同じ体を....あの時は真っ暗で茉莉菜の裸を見る事は出来なかったが....
「純君?」
亜梨紗が不安そうな声を出した。
「どうしたの?」
「なんだか....ボーっとしていたから....」
「ん?ゴメン....じゃあ行こうか?」
「うん....」
それからも亜梨紗は俺のすぐ横で悲鳴を上げ続けていた。
「ああ....怖かった....」
ホラーハウスを出るとホッとしたように亜梨紗が呟いた。
「しかし驚いたよ....亜梨紗..イメージが全然違うんだもの......」
「それ!どういう意味よ!」
「いやぁ....亜梨紗も女の子だったんだな!」
「失礼だな!アタシだって....仕方ないだろう....瑞希に言われたんだから......」
最後のほうは聞き取れなかったので
「えっ?」
聞き返すと、亜梨紗は真っ赤になって
「なんでもない!」
慌てている亜梨紗の様子にクスリと笑った後
「亜梨紗も女の子だったってよくわかった....」
「えっ?」
「亜梨紗が....その....胸を押し付けてくるから....」
「バ....バカ....」
亜梨紗は顔を真っ赤にして
「あの子でなくて残念だったね!」
「えっ?」
「この前一緒にいたスタイルのいい子よ!アタシみたいのに胸を押し付けてられても嬉しくないだろう!」
「そんな事ないだろ!亜梨紗だって充分....あっ!」
亜梨紗が睨んでいる事に気づいた。
「見た事もないくせになんでわかるのよ!」
「それは....」
俺が言いよどんでいると
「茉莉菜のを見たから?」
亜梨紗の言葉に凍りついたように何も答えられなかった。
「み....見た事なんてないよ!」
「本当に?怪しいなぁ....それが本当なら....そんなに慌てなくても....」
「バ....バカ!本当だよ....」
亜梨紗は疑いの目で俺を見ていた....あの時は真っ暗で....そう自分に言い聞かせていたが....もしかして茉莉菜から何か聞いているのでは....そんな疑問が捨てきれなかった....
「茉莉菜とそんなに似ているの?」
「双子だからな....完全に一致してるって事はないけど....基本スペックは同じだから......って!何見てるんだ!まさか!アタシの裸を想像して....」
亜梨紗は両手で胸を隠す仕草をした。
「バ....バカ!そんな事するわけないだろ!それに....あの時は真っ暗で....」
「プッ....何暴露してるんだよ!」
「あっ!!」
「そうか!やっぱりそうだったんだ!」
「えっ?」
「お前も男の子なんだな!やる事はやってたわけだ!」
「別にいいだろ....」
地雷を踏んでしまった俺は顔を真っ赤にして開き直るしかなかった。
「アタシ....今度はあれに乗りたいなぁ....」
スパイラルコースターを指差す亜梨紗に
「わかった....」
俺は頷くしかなかった....