青の荒野-1
見渡すかぎり荒野が広がる。緑少ないこの場所には荒野の土の色と、澄み渡った空の青い色しかない。
一台のジープが荒野を切るように勢い良く走り抜ける。運転しているのはまだ顔に幼さが残る青年だった。
遠くに街が見えかけたところで青年は車を勢い良く止めた。降りずにそのまま街を眺める。それと同時に車内蔵の電話が鳴った。
「はい、ああ…相羽?」
「ガレット、どこにいるの?少佐がお呼びよ?」
ガレットと呼ばれた青年は電話を切り、直ぐ様車を走らせ来た道を戻っていった。向かう先は軍本部、少佐の呼び出しと聞きより一層アクセルに力が入る。
ガレットはギアをハイトップに入れただスピードを求めた。バックミラーで離れていく街を確認する。すぐに意識を前に戻し軍本部に急いだ。
「ガレット・ラフ中尉、只今戻りました。」
本部に戻りガレットはすぐに少佐の部屋に向かった。ノックをし、自分の存在を知らせる。
「入れ。」
許可を得てガレットは中に入り、部屋の主に敬礼をする。
「およびですか?アレフ・ジェラード少佐。」
アレフと呼ばれた少佐は椅子から立ち上がり優しい笑顔でガレットを横のソファーに促した。
「おかえり、どこまで行ってたんだ?」
「ちょっと西の方までね。相羽から連絡あって戻ってきたけど、なんかあった?」
お互いにソファーに腰掛けて話しはじめる。この二人の関係は従兄にあたり、少佐と中尉という差があっても二人だけの時は楽な態勢をとれるのだ。
「ちょっと提案、というか命令なんだけどね。ガレットは新しい部署を上が作ろうとしているのは知ってるだろう?」
「話くらいは…確か、軍正規外に作られるって聞いたけど。」
内容に比例し、ガレットの顔が真剣になっていった。前のめりになり、深く沈むソファーにも負けず体が浮き上がる。それはアレフも同じだった。
「そう、いわゆる世回り役になるんだけどね。名をイレギュラーフォースというんだ。以後通称はEFになる。ガレット、そこに君を移籍させるつもりだ。」
Excerpt Irregular Fouce
(抜粋された兵士)
正規軍内特殊部の巡回警備隊という風に表記されるとアレフは続けた。内乱や民族戦争の恐れも強まる中、少しでも情報収集しなければいけない焦りと騒動をおさめる必要性から急遽作られた部隊だった。
このガレット・ラフは多くの軍人の資料の中から、素質を見抜かれ抜擢されたということらしい。
「で、どういう事?」
「このEFの特徴は、自由に動き回れるということだ。指示は司令塔から下るが、拠点は本部じゃなくてもいい。民間からの依頼で動くこともあるかもしれない。そして必ずペアかグループで動くこと。ほとんどが潜入捜査になると思う。」