青の荒野-2
アレフの言葉を一字一句聞き逃さないように、ガレットは集中していた。そして頭で整理し、情報からEF像を組み立てていく。そして一つの疑問に達した。
「なんでオレが選ばれたんだ?」
ガレットの問いにアレフは待っていたかのように答えた。その目は強く、優しい。
「自分の経歴を考えれば分かるだろう?」
やっぱりかという表情でその答えを受けとめた。地方軍人だった頃、ガレット・ラフの所属する軍基地が反乱軍によって壊滅させられた。
軍基地を壊滅させられるのは恥以外の何者でもない。ガレットはどん底からはい上がり軍本部中尉の位置までやってきた男だった。
「…オレも出世したもんだな。いや、むしろやっかい払いか?」
「僕も中将も期待しているよ。」
「正式にはいつこの辞令が下される?」
「明日には。ガレット、一番大事なことをまだ君に言ってないんだけど。」
話も終わり、退室しようとする気配をもつガレットにアレフは先手を打った。そしてもう一度視線を自分の元に戻す。
「ガレット、EFになるにはパートナーが必要だね。君にパートナー候補が一人いるんだけど検討してくれないかな?」
「検討?決定事項じゃないのか?」
「気に入ると思うよ。彼女は一般の人なんだけど、半年前からナビゲーター研修を受けてもらっている。」
アレフは立ち上がり、自分の机の上にある資料から一つのファイルを取り出した。一度中身を確認して、それをガレットに渡す。
ガレットは中をみて何かに気付き、アレフに視線を戻した。優しい笑顔のアレフとは正反対に、ガレットの表情には動揺がみられる。
「知った顔かい?」
「アレフ…これって…。」
「良かったら今日さっそく会いに行ってみてくれないかな?」
ガレットは返事をする事無く再び視線をファイルに戻した。まだ動揺している。
知った顔なんてもんじゃないくらいアレフは知っているはずだ。
「今から、会いに行ってもらっていいかな?」
もう一度アレフはガレットを促した。少し間を取ってから、アレフの顔を見ずに頷きながら返事をした。
「…分かった。」
静かに退室し、ドアの前で立ち尽くした。手にしたファイルをじっと見つめる。
そこにある名前、写真、改めて目にすればするほど思いは募る。