それぞれの世界-21
口をポカンと空けたまま、おそらくマヌケな顔になっているあたしの顔を見つめながら、彼は首の後ろを掻いていた。
「俺さ、この街に異動になって2年くらいなんだけど、ほとんど出歩かないから飲み屋とか全然知らないんだよね。
料理も美味いとこ知ってんの?」
「あ……、は、はい。一応は」
え、この流れはもしかして?
なんでか膝がガクガクと笑い始めて、グニャリとひしゃげてしまった地面の上に立っているような気がした。
「じゃあお互い一旦家帰ってから出直しますか?」
「えっ、それって……」
あたしは、信じられないといった顔して、久留米さんを見つめていたら、
「俺ね、昔よく女友達の恋愛相談っつうか、彼氏の愚痴を散々聞かされてたんだ。
なんつーか、宗川さんを見てたらふと懐かしくなった」
と、懐かしそうに目を細めていた。
あたしはその瞬間、全身から汗が噴き出すくらい身体が熱くなった。