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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの世界-20

あたしが乱暴に腕で目元をこすっていると、


「ゲイの意見なんて参考になんの?」


と、久留米さんの声があたしに向けられた。


「ちょっと! まだそれ引っ張るんですか!?

それは謝ったはずですよ!」


あたしは顔を赤らめて彼を睨んだ。


でも、そんな皮肉めいた冗談が今のあたしにはとても癒される。


「久留米さんって意外と根に持つタイプなんですね」


久留米さんの皮肉で少しだけ元気が出たあたしは、ちょっぴりイヤミを言ってやると、


「まあ、あれは結構衝撃的だったし、多分忘れらんない」


と、久留米さんはあの時のことを思い出しているのか、ニヤリと意地悪そうに笑っていた。


少し顔が赤くなったのを自覚したあたしは、それがバレないように“もう”とむくれてそっぽを向いた。


背後で久留米さんがクスッと笑ったような気がした。


そして、彼はあたしの背中に向かって、


「でもさ、こんな早い時間から開いてる飲み屋なんてあるの?」


と言った。


驚いて、あたしはバッと振り向くと久留米さんは壁にかけられた時計を指差している。


時間は3時を過ぎたばかり。


少なくとも5時にならないと居酒屋なんかは開かないはずだ。


「じゃ、じゃあ、あたし車で来ちゃったしこんな服装だし……、後で出直し……って、えぇ?」


久留米さんの言葉があまりにもサラリとしていたので、あたしは自分の反応が恐竜並に鈍くなっていたことにしばらく気付かなかった。






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