それぞれの世界-11
苛立ったまま車を走らせながら、左手で助手席に置いたバッグを探り、煙草を取り出す。
ボックスを開けたら空になっていたことに気付いて、チッと舌打ちが漏れた。
タイミングが悪い時って本当に何もかもうまく行かない。
なんとかこの苛立ちを抑えるために、あたしは煙草を調達することにした。
普段のあたしはさほどヘビースモーカーってわけじゃない。
三日で一箱なくなるペースだから、煙草が吸えない状況ならさほど苦もなく我慢できるレベルの可愛いスモーカーだと思う。
でも、さっきの光景を目の当たりにして平静でなんかいられない。
とにかく煙草で心を落ち着けたくて、あたしはあてもなく車を走らせながらコンビニを探した。
見慣れたコンビニの看板を見つけると、あたしはそのままウインカーを上げ、左折する。
あたしの家から正反対の方に走ってきた所にあるコンビニは、入るのは初めてかもなんて思いながら車を停めた。