結衣の頼みごと-6
昨日はイキナリだったのでこの状態で泣きだした結衣だったが、今日は覚悟を決めて自分から見せていたので、泣きだすことは無かった。
「ホンマのことやんか」
「しゃあないやんか。エッチなモン見たり、触ったりしたら勝手に濡れるんやから…」
「えっ?触って濡れたこともあるん?それって結衣もオナニーしてるってこと?」
しばらく固まっていた結衣だが、やがて顔を覆ったまま静かに頷いた。お硬くて超純情だと思っていた結衣が驚いたことに自慰行為を認めた。それを見た裕樹は、ふと或ることを想像してしまった。
「も、若しかして、昨日一晩中泣いてた思たけど、まさかオナニーしてよがり声上げてたんちゃうやろな?」
「恥ずかし…」
その言葉で裕樹の問いかけを、認めたことになった。
「アホらし。今日一日心配して損したわ」
「初めはホンマに泣いててんで、メチャショックやったんやから。でもな…」
「『でも』なんや?」
「裕樹におめこ触られたん思い出したら、段々体が熱うなって、知らん間に自分でもおめこ触っててん。ほんでまた触られたらどうなるんやろなあって」
「まじで…」
「ホンマ。ほんで裕樹にエッチな声を聞かしたら、また触りに来てくれるかなあって思たから、昨日は遠慮せんといつもより大きめの声だしてオナニーしててん」
告白の通りに、最初はショックで泣いていた結衣だったが、泣き疲れた頃には最初のショックも納まっていた。それと共に初めて見たイキリ勃つ男のモノが脳内を駈け廻り、胸のドキドキが納まらなくなっていた。
そのドキドキがやがて裕樹に対する恋愛的なドキドキに刷り変わり、もう一度裕樹とこんなことがしたいと思うようになったのだ。本当の意味とは違うがこれは一種の『刷り込み現象』だ。
「ほんだら何?今日は最初からこうするつもりやったんか?」
「うん…。でも、裕樹が嫌がったら止めてたよ。あかんかった?」
「あかんことないよ。メチャ嬉しいわ。そういうことやったら、遠慮なしに触ってもええんやな」
「アホ、そんなんイチイチお姉ちゃんに聞かんと自分で考え。恥ずかしいやんか」
「卑猥な単語を平気で言うのに、何を今さら恥ずかしいねん。その三文字、オレでも言うのん恥ずかしいで」
結衣の恥ずかしさの尺度が裕樹にはイマイチ理解できなかった。
「だって真弓が昨日言うてんもん。女がおめこって言うたら男は興奮するて」
結衣の脳裏に真弓とのやり取りが駈けめぐる。
…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…
―― 昨日、高校の校庭。結衣が真弓の首を締めた後のこと ――
「なあ、なんで真弓はエッチなことばかり言うん。幾ら女のあたしが相手でも恥ずかしないん?」
「エッチなことて?」
「そ、その、おめ何とかとか…」
結衣の声が小さくなった。
「おめ何とかとちゃう。おめこや。あっ、首絞めなや」
真弓はその部分だけワザと大きめの声を出して卑猥な笑みを浮かべた。
「あたしもホンマは言うのん恥ずかしいんやで。そやから今はまだ結衣の前でしか言うてないよ」
「ホンマに恥ずかしいんかいな。なら、何でそんなん言うんや」
結衣が疑いの目を向けた。
「練習や。この前、エロサイト見てたら、女の子が卑猥な言葉を言うたら男がメチャ興奮するって書いてあったんや。これは使える思たんや。でも、いざ男の前で上手いこと言われへんかったらアカンからあんた相手にして反応見てんねん。ほんだらあんた面白いように反応するから癖になってしもてん」
真弓はそう言いながら「ウヒヒ」と笑った。
「何じゃそりゃ」
「あたしが裕樹くんと付き合うことになったら、デートの時には10分に一回は言おう思てるねん」
「あんた絶対ドンビキされるで…」
…☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆…