結衣の頼みごと-3
「悪いな。で、用事ってそれだけ?」
裕樹は他の女と付き合えと結衣の口から聞かされたことでショックを受けていた。今は出来ることなら早く結衣に部屋から出ていって欲しかった。
それ以前に、いつまでも2人っきりでいると、また襲いそうになりそうで怖かった。
「う、うん…」
そう返事をした結衣だったが、なかなか自分の部屋に戻る素振りを見せなかった。
裕樹が真弓のことを受け入れるならば、そのまま自分の部屋に戻るつもりだったが、裕樹が断ったので、気になることを確認するまで裕樹の部屋を出ようとは思わなかった。しかし、それはなかなか切り出せるモノではない。
「結衣?どうしたん」
促された結衣は思いきって、話を繋ごうと思った。
「あっ、そや、裕樹、あんたが見てたエッチな動画あるやろ、アレお姉ちゃんにもう一回見せてくれへん?」
「へっ?何でそんなん見たいん?」
「あっ、エッチな気持ちは無いよ。ちょっと確かめたいことが有って…」
真っ赤になって言い訳をする結衣。
「え〜〜〜、いややで」
自分の恥部を曝け出すことと同じなので、裕樹は当然ながら断った。
「いけず。そんなんやったら、さっきの話は無しにすんで。裕樹に襲われたってお母ちゃんに言うたる」
「ずっる〜、一旦決めてながらそれは無いで!」
結衣がいつもの調子に戻ったので、裕樹もいつもの調子で返した。しかし、結衣が一度言いだしたらなかなか引かないことを知る裕樹は、しばらく考えた末に見せることにした。
「まっいいか。昨日も見られたしな。チョット待ちや」
スマートホンを操作し、問題の動画を呼びだした。
「ええか、再生するで」
結衣の目を覗き込んで聞くと、結衣は生唾を飲み込んで頷いた。裕樹は声も聞けるようにイヤホンを抜いて動画を再生させた。
内容を知る裕樹まで一緒に見ることもないが、姉弟が並んで小さな画像に釘付けになった。
「うっわ」「えええ!こんなことすんの?」「やらしい」「やだ〜」
やいのやいのと騒ぎながら、約5分間のダイジェスト版のアダルト動画を見終わって、結衣の顔はすっかり上気していた。
真っ赤になった結衣に、ドキドキしながら裕樹が尋ねた。
「こ、これで、何を確認したかったんや?」
「えっ、あ、あれや、ほらあれ」
「しゃあから何?」
裕樹の問いに少し間を開けてから、結衣が答えた。
「なあ、この女の人ってお姉ちゃんに似てへん?」
「うっ」
まさしく結衣似の女優をワザワザ探して選んでいたので裕樹は返答に困った。そんな裕樹を見て結衣は確信を持った。
「やっぱり…。裕樹って、これ見てお姉ちゃんのことを想像してたんとちゃう?」
聞き難いことを思い切って聞いた。昨日、一瞬では有ったがこの動画を見た時から気になっていたのだった。
(そんなこと言えるけぇ)
と思ったが、結衣の目に見つめられている内に裕樹はコクリと頷いていた。