結衣の頼みごと-2
「ど、どうしたん?」
「はい、ストレートティ、裕樹これ好きでしょ」
結衣は顔を上げると手に持ったペットボトルを裕樹にふわりと投げた。
「おっと、さ、さんきゅう」
裕樹がぎこちない笑顔を向けると、同じ様に結衣もぎこちなく返した。
「で、コレくれるために来たん?」
「ううん、昨日のこと謝りに…引っ叩いてごめんね」
結衣は再び俯くと、裕樹の思いもしなかった謝罪の言葉を言ったので裕樹は驚いた。
「謝らなアカンのはこっちや。昨日は嫌なことしてごめん」
裕樹も頭を下げた。
「もうせえへん?」
結衣が俯きながら聞いた。
「うん、もうせえへん。結衣が泣くとこ見たないし」
「そっか。じゃあ昨日のことはお互いに無しな。もうウジウジせんとこな」
結衣がニッコリ笑い、少しだけいつもの調子に戻った。
「お、おう、じゃあ無しで。それをワザワザ言いにきてくれたんか」
裕樹は結衣の心の広さに感謝した。多少はぎこち無くはあるが、結衣のお陰でこれまで通りに戻れるだろう。
「うん。でもそれだけやないねんけど」
「ど、どうしたん?」
若しかしていつも結衣の下着を物色してるのもバレたかと思った裕樹はドキドキした。
「あんた、あたしの友だちで真弓って知ってるやろ?ほら去年家にきた騒がしい子」
「ああ、あの子か」
下着のことではなかったので裕樹はホッとした。
「結衣と一緒のテニス部の子やろ。昨日もクラブの時に一緒にほたえてたやんか」
結衣の様子を盗み見た時に、結衣が首を締めていた真弓の姿を思い出した。
「アレ見てたん。恥ずかしいなあ」
「楽しそうやったで。ホンでその真弓って子がどないしたん」
「真弓がな、あんたとつき合いたいねんて」
「えっ?まじで?オレ年下やで」
「それは知っとるわ。去年家に来た時に一目惚れらしいわ。で、どうする?」
「どうするって言われても、今はそんな気起きへんわ」
今は結衣のことで頭が一杯で、他の女のことは考えられなかった。真弓を利用して、結衣のことをふっきればいいのだが、姉に似た真面目な性格が気持ちの整理の付かないまま、他の女といい加減に付き合うことのできない裕樹だった。
「じゃあ断るん?」
「うん、断っといて」
「わかった言うとくわ」