第3章 一緒にお弁当を食べます。-1
「一緒にお弁当を食べます」
「あ、ああ、弁当か・・・まさか、僕の弁当まであったりするのか?!」
「何を驚いているの?彼女の手作りのお弁当を食べたくないの?」
「あ、いえ、食べたい!心の底から食べたいです!てか、ひたぎが作ったのか?」
「もちろん私が卵を焼いて、ご飯を詰めたのよ。後はお母さんが作ったの。なんか文句、いえ、言いたいことがある?」
「はあ、ないです・・・」
中略
「あーん!」
「っく!そうきたか!!」
「どうしたの? ほら、あーん!」
「展開が早すぎて、ちょっと怖い!」
「あーんってば!」
「っくぅぅ! あ、あーん!」
ひたぎの瞳に悪戯の色が浮かぶ。
「えい!」
ご飯を乗せたひたぎの箸が、八蜜のほほに突き刺さる。
「ぐわあ!」
「あは、あははは、あはははは、」
肩を揺らして笑うひたぎに八蜜は見とれていた。高校生とは思えない極上の気品を纏い、常に凛としたたたづまいを崩さないひたぎが、いたずらっ子の表情を浮かべて、笑って魅せた。そして、それはあまりにも上品で、魅力溢れる笑顔だった。
「・・・お前の笑顔が見れて、良かったよ・・・」
「あら八蜜くん、ほっぺにご飯粒がついているわよ」
「お前が付けたんだ!」
「取って上げる」
「・・・・・」
ひたぎの瞳に再び悪戯の色が浮かぶ。ひたぎは八蜜のほほに手を伸ばしてご飯粒を拾うと一粒一粒自らの唇へと運んでいった。そして、最後の一粒が残った。
ひたぎの体が傾き、八蜜に重なっていく。そして、八蜜のほほに唇を寄せるとひたぎは最後の一粒を舐め取った。
「!!!!!!」
気がつけば、八蜜は頬頬を真っ赤に染めていた。