第2章 それほどまでに言うのなら、あなたの彼女になってあげる。-1
「そんなところに野良犬の死体が棄てられているかと思えば、八蜜 昴くんじゃないの?」
「まてまて、何をどう間違えると僕が野良犬の、しかも死体に見えるんだ?」
「あら、大差ないと思うけど?」
「お前の感性には恐れ入るよ。で、何のようだ?」
「お前呼ばわりしないで、ひ・た・ぎ・さ・ん、でしょう?」
「ああ、悪かった。ひたぎさん」
「先日のお礼を言いたいと思って」
「お礼?」
「そうよ、スカウトマンにしつこくされていたのを助けてくれたでしょう?」
「ああ、友達として当たり前のことをしたまでだ」
「あら、私のことをお友達だと思ってくれているのね?」
「なんだなんだ、ひたぎは僕を友達だと思っていないのか?」
「そう・・・あなたのことを親しく思わないでもないけど・・・」
「でもさ、気をつけた方がいいぞ?!」
「何を?」
「ひたぎほどの女が一人で渋谷を歩けば、男が寄ってきて当然だろう?」
「女?そんな言い方、女性をSEXの対象としか見ていないように聞こえるわ?八蜜くんって、どうしようもないゲス野郎ね?」
「なんで、そうなるんだ?ひたぎが魅力的な女性だと自覚しろと言ってんだ!」
「ご忠告は、ありがたく頂いておくわ」
「分かってくれれば、それでいい」
「お礼をしたいと思っているの」
「気にしなくていいよ」
「私はあなたの手を煩わせてしまったのよ。あなたの手を借りたの。あなたがそれで良くても、私はお返しをしたいのよ」
「それほどのことでもないけどな。で、お返しってなに?」
「あなたの願いを一つだけ叶えて上げる。どんなことでもいいわよ」
「ど、どんなことでも?って、お前は魔法使いか?」
「魔法なんか使えないわ。でも、虫けらの小さな願いくらい叶えて上げられる」
「おいおい僕はそんなに小者か?僕にだって大きな志しくらいあるんだぞ!」
「世界征服とか?」
「そんな大それた奴と友達でいられないだろう?」
「まあ、そうね?でも、微小生物の八蜜くんのお願いなんて、せいぜい可愛い女の子を紹介してほしいとか?」
「そ、そんな・・・ことは、ない・・・」
「なら、童貞を棄てたいとかかしら?」
「お、お前・・・」
「それでもなければ・・・」
「そうね・・・彼女がほしい・・・とか?」
「そうだと行ったら、どうなるんだ?」
「私でいいの?」
「いいのか?」
「本当にいいの?」
ひたぎが八蜜の瞳を覗き込む
「あ、ああ・・・」
「私でいいのか?私がいいのか?彼女になってからのモチベーションに大きく影響するわよ?」
「っく! 分かったよ!ひたぎのことがずっと好きでした!僕の彼女になってください!」
「ひたぎ?ひたぎさんでしょう?」
「ああ・・・ひたぎ・・・さん」
「いいわ。それほどまでに言うのなら、あなたの彼女になってあげる」