箱の中の夢-1
「うあ……」
彼の低い呻き声が狭いアパートに響いた。
鼻にぬけるようなその声が僕の脳を刺激する。
大量にアドレナリンが放出され、僕の体はより彼を求めて暴れまわる。
「…は、ふ。…あ、大輔……ダメだ」
彼の唇が僕の名を呼んだ。
その声を聞くたびに、興奮した脳味噌が、彼と深く繋がろうともがく。
「そんな、揺するな」
間に喘ぎ声を含ませて、彼は僕に抗議する。
それでも腰に回された彼の足が、僕との距離を縮めようとキツクなるのが分かる。
僕も耐え切れずに嬌声が上がり、その度に彼の唇を求めてしまう。
彼の目尻に頻繁に溜まる涙を、僕は吸い取って、彼を抉る。
僕の胸や咽喉を、彼の手が這っていくたびに、僕の体の感度は上がってゆく気がする。
彼が僕を抱きしめてきた。
グッと唇を噛んで、眼を閉じて、頬を高潮させている。
僕は彼の髪を努めて優しく梳いた。
ブルブルと唇を震えさせて彼は、声を絞り出す。
「もう、……イク」
腕の中にある彼の眼が歪み、僕の熱い性器を一気に締め付けた。
その顔があまりにも可愛らしく思えて、僕は彼の身体を掻き抱き、無理やりに抉じ開けた口腔内で己の舌を暴れさせた。
ゆっくりと彼は痙攣し、果ててゆく。
体がだるさに支配されていた。
あまりに疲れて、僕は動けず、目をつむる。
腕の中に彼がいて、細い髪が僕の顎を擽る。
彼も彼でうとうととしている。
時間は午前に入ったばかりの深夜で、耳をすませると、夜の闇の向こう側に色々な音が聞こえる。
隣ではサッカー中継のテレビを見ている女子大生が声を荒げていて、シュンスケシュンスケと連呼していた。
お向かいのベランダでは、飲み会がされているのか、甲高い笑い声と野次が聞こえる。
いつもはウザイと思える音が、今日は天上の音楽のように聞こえる。
それは満たされた瞬間感じる幸福感によるためのもので、十日もすれば消えてなくなってしまうだろう。