投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

箱の中の夢
【同性愛♂ 官能小説】

箱の中の夢の最初へ 箱の中の夢 1 箱の中の夢 3 箱の中の夢の最後へ

箱の中の夢-2

 彼が僕の腕の中にいることさえ奇跡に近いことだが、人間とはバカなものでその感覚もすぐに忘れてしまうのだ。

 せめて今だけはこの男に精一杯酔っておこうと決めて、彼の髪の毛に口付けした。





 いつの間に寝たのか分からないが、朝が来ていた。

 僕の剥き出しの腕の中からは、彼が消えていて、一瞬昨晩のことは夢なのかと背筋が凍った。

 ザーザーと流れるシャワーの音と、部屋に充満したなんとも言えない男特有の青臭い香りで、僕はようやく夢ではないことを確認し胸を撫で下ろす。

 全裸の僕はベッドから出て、着替えを取ろうと床に投げ散らかしてあるGパンに手に掛けたが、穿かずにズルズルとそれを引張ってバスルームに向かった。

 シャワーの音に混じって、彼の鼻歌が聞こえる。

 中学の頃に流行った曲か何かで、少し哀しい曲なのだ。寂しそうな響きが、彼の低い声を寂しそうに際立たせている。

 僕は急に切なくなってしまって、バスルームの半透明の扉を叩いた。

「大輔?」

 彼の声が僕の名前を呼ぶ。それだけでもう胸が高鳴ってしまう。

「入ってもいい?」

 僕は扉を開けながら、今更だと思いながら聞いた。

 彼はきちんとシャワーカーテンを引いていた。引っ越すときに姉から貰った黄緑色のカーテンは、もう大分くたびれている。

 僕は顔だけを出して、彼の顔を見つめた。

「一緒に入る?」

 笑いながら彼は聞いてくる。

 シャワーから溢れるお湯は、もうバスタブを半分くらい埋めている。

 僕は頷いた。

 彼もはにかみながら手招きをする。

「じゃあ、失礼」

 僕は股間も隠さずに、バスタブに足を突っ込んだ。

 流石に狭くて、僕らは肌をピッタリとくっつけあって、バスタブに沈んだ。

 換気用の窓は、朝日がようやく差し込んでくる時間だと告げていた。

「狭いって」

 そう言って眉を顰める彼に、

「狭いね」

 と僕はオウム返しのように彼の耳に囁く。

 勢いで耳を口に含んだ。


箱の中の夢の最初へ 箱の中の夢 1 箱の中の夢 3 箱の中の夢の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前