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想ぃの行方
【青春 恋愛小説】

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想ぃの行方-1

クラスに一人は苦手な奴っているもの。自分の気に入る人ばっかりなんて、世の中そんなうまくできてない。そんなの分かってる。だけど、奴だけは癪に障る。



秋風が少し染みる朝、突然後頭部に痛みが走った。思わず声を上げるとともに、勢いよく痛みの原因の方に振り返った。
「悪いッ!……って、何だ心かよ。謝って損した」
そう言ってケラケラと奴は笑った。
「かばんの角あたったんですけど?」
「俺のかばんの中教科書入ってないから大丈夫!よかったねぇ」
この言い方!本当、癪に障る。この男は私の恋愛対象から最も遠い存在だ。
「朝から仲良しだねー」
のんきなことを言ってきたのは友達の麻衣だった。
「やめてよ、嬉しくない」
ツンとした感じで返すと、麻衣はいつものように納得いかない顔をして言う。
「心くらいだよ?矢田くんのことそういう風に言うの」
不服なことに女の子たちから黄色い声を浴びているのが、さっきかばんをぶつけてきた人物『矢田潤平』。顔がいいのは認めるが、優しくて甘フェイスの年上好みの私には矢田が学年一モテていることがまったくもって納得のいかないことだった。



―数学の時間―

「心っ!プリント見せて!」
「は?」

隣の席から小声で話し掛けてきたのは…………この流れからして、もちろん矢田だ。苦手な奴ほど隣の席になる。これは一体どういうことなのか…。

「麻衣に見せてもらえば?」

毎時間のことだから、呆れたように言った。

「あ、そー。麻衣チャン見せて♪」

麻衣は矢田に甘いから喜んでプリントを見せていた。

「じゃぁ、問5と問6を…西野!矢田!」

最低!矢田と一緒にあてるなんて、先生も何考えてんの!?しかも難しい問題だし…。黒板を前に隣で矢田はすらすらと解いている。当たり前だ。さっき麻衣に見せてもらってたんだから。…私も見せてもらえばよかったと少し後悔した。
悩んでるうちに、矢田は解き終わり席に戻った。そして、チョークの進まない私を冷やかしに入った。

「先生〜心にその問題は無理だって!」

「ん?西野分からんのか?」

矢田の発言で外を眺めていた先生がようやく私に目をやった。大方、外の美人体育教師を眺めていたんだろーけど。

「えっと…頭足らなくて分からないや〜」

えへっとかわい子ぶって言うと、かわりに麻衣があてられ私は席に戻った。

「よかったなぁ、俺って優しいだろ?」

ニヤニヤと憎たらしい笑みを浮かべる矢田。

「ご丁寧にありがとう、矢田くん」

最強に恐ろしい笑顔で返してやった。


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