想ぃの行方-2
――――昼休み。
「矢田くんかっこいいー」
窓の前に並んでいる女の子たちが口々に言う。男の子たちが校庭でサッカーをしているのだ。昼休みになると女の子たちは決まって窓から眺めている。
「かっこいいー」
麻衣まで口をそろえて言う始末。はぁーと呆れたように一息つくと麻衣は慌てて訂正した。
「あ、もちろん私の一番は速水くんだけどね!」
麻衣はどうやら矢田といつも一緒にいる速水が好きらしい。まぁ、私には関係ないけど…。
「ねぇ、心は好きな人いないの?」
いつものように麻衣は聞いてきた。だから私もいつものように返答した。
「いないっていつも言ってるじゃん」
すると、麻衣はいつものようにつまらなそうな顔をするの。
「いいなぁ、心は!」
「何で」
「矢田くんと仲良いから速水くんとも仲良いじゃん」
「あぁ、速水は仲良いけどね」
「矢田くんもでしょ!」
仲良いのか悪いのか…。渋った顔をしていると麻衣は話を続けた。
「それにィ!!矢田くんって心だけ呼び捨てだよね!何か特別な感じィ♪」
目の前に人差し指をたて、私の反応を心待ちにしているように笑みを浮かべる麻衣。
「……ぁ、麻衣携帯鳴ってる」
「え?本当、電話だ!」
うまく乗り切った。麻衣はこの手の話をするとブレーキがきかなくなるから困る。矢田が私を呼び捨てだろーと、そんなの関係ない。……………でしょ?
夕日でオレンジ色に染まる教室。みんな帰って行く中、私はかばんを持とうともしなかった。
「心ー、見つかった?」
「ないー」
早く帰りたいのは山々なのだが、大事な指輪を落としてしまったから見つかるまでは帰れない。
指輪といっても、もちろん私が男からもらった指輪などではない。お母さんが昔お父さんからもらった指輪なのだ。実のところ、私は母子家庭であり、指輪はお父さんの形見といったことろ。さすがに指にはめておくのは誤解を招きそうなので、携帯のストラップとしてつけていたのだが…それをどこかに落としてしまったというわけだ。
「まだ時間かかりそうだから麻衣先に帰ってくれていいよ」
「そう?じゃぁ…ごめんね」
麻衣は何か用事があるのか少し小走りで教室を出ていった。
少しかがんだ姿勢で探し物に夢中になっていると…。