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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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少しだけ、揺れる-4

 


   ◇   ◇   ◇



20人足らずで行われる予定の会議の資料作りなんて、あっという間に終わってしまった。


またすぐに手持ちぶさたになってしまい、何か仕事はないか探して見たものの、特になさそうである。


昼休みにパスポートを申請できずに出直してきたご夫婦は、松村主査が平謝りしながら応対していた。


また、普段はパスポートを申請しにきたお客さんは越後さんやあたしに任せっきりの寺内主事も、今日は積極的に窓口に立っているし、二人なりにあたしに気を使っているのは明白だった。


だけどそれがかえってあたしの仕事を奪っていて、ボケッと自分の席で呆けてしまう事態となった。


……このままアホ面して席に着いてるのもなんだし、トイレに行くついでに一服でもしてこよう。


あたしはそーっと席を立って、廊下に出た。


廊下は日当たりが悪いからひんやりした空気が頬を撫でる。


ガランとしたエントランスに抜け、喫煙室に続く廊下の先を見たら、久留米さんの大きい背中がちょうどそこに入って行く所であった。


それを見て思わず尻込みしてしまう。


誰か別の人がいればいいけど、二人きりでまたあの密室にいるのは嫌だなあ。


いつもはそう思って彼が入るのを見かけた時は、わざと時間をずらしていたけど、今日は昼休みの一件がある。


あたしのせいで、関係ない久留米さんに頭を下げさせてしまったのは事実だし、改めてちゃんとお礼言うべきだよね。


そう決意すると、あたしは先に更衣室へと向かい、自分のロッカーから財布を取り出して、再びエントランスに戻った。


そしてそこに設置された自販機で缶コーヒーを一つ買う。


働く男には缶コーヒーがよく似合うという勝手なイメージだけで、それを選んでしまった。


あたしが手にした微糖の缶コーヒーは、塁がよく飲むやつと一緒の、金色に輝くパッケージのやつだった。







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