少しだけ、揺れる-11
一瞬にして久留米さんが真顔になってこちらを見た。
しばし訪れた、沈黙。
そしてその沈黙が、自分がいかに失礼なことを言っていたかを気付かせた。
……こんなことなんで軽はずみに言っちゃったんだろう!
デリケートなことをズケズケ口にしちゃうなんて、きっと怒らせてしまったに違いない。
あたしは久留米さんの顔を見るのが怖くなって、俯いてしまった。
しかし、頭上に降りかかってきたのは、彼のものであろう笑い声だった。
慌てて顔を上げると、久留米さんは口を手で覆い隠して笑っていた。
それを見た途端、忌々しい文屋さんの顔が浮かんできた。
やっぱりゲイってのはガセネタだったんだ!
アイツ、後で覚えてろ!
怒りで自分の失言した恥をごまかしたつもりだけど、もう後の祭りって奴だ。
考えてみたら、あたしはこの人の前で恥ばっかり晒している気がする。
あたしは、久留米さんの笑い声を聞きながらも恥ずかしさのあまり、再び俯いてしまった。