岩陰に秘められた恋-1
「岩陰に秘められた恋」
「行っくぜ〜」
ヒロトが打ったビーチバレーボールが僕の方に向かって来た。僕は踏み込みのタイミングを失い、バレーボールはビーチの岩陰の方向まで転がって行った。
「あ〜あ〜。キョン、何やってるんだよ〜。せっかくラリー続いてたのに」
「ヒロト、ゴメンな!」
僕は都内の私立大学3年生、設楽京太。仲間からはキョンって呼ばれてる。大学ではそれなりに楽しんでる。バイトしたり合コンしたり。普通一般の学生生活は楽しんでいた。
でも僕にはコンプレックスがある。20歳にして、未だ童貞。
それなりに遊んではいたけど、本気で愛せる存在には出会えなかった。
だが、あの時親友のヒロトがビーチで強いボールを打ってくれたお陰で、僕はヒロトに一生感謝するようになった。
僕が転がったボールを追いかけて岩陰までたどり着いたその時。
一瞬、僕は、目を疑った。
純白のパンティーを丁度下ろしたばかりの、美しい全裸の女性が目の前にいた・・・。
彼女は、「あ・・・」と一瞬声を出して、女の恥ずかしい部分を隠すことも忘れたのか、その場に立ち尽くしていた。
その女性の顔を見て、僕はすぐに察した。アイドルグループABK48の中山佳奈。僕は今時の男子学生のブームに漏れず、ABKの大ファンであった。実は今年のABKの握手会で、僕は彼女と握手して会話していた。佳奈は僕の、推しメンである。
僕は大好きなアイドルが目の前で全裸でいる事実に、ただ立ち尽くしていた。しかし、男のカラダは正直である。
海水パンツの中身が一瞬にしてはち切れそうになったのが分かった。海水パンツの布地に自分のペニスが擦れて、僕は腰が抜けそうなほどの快感を味わっていた。
2人は、余りの突然の出来事なのに、まるで恋人同士のように、お互い見つめ合っていた。
ふと、佳奈が、口を開いた。
「あ、あの・・・。この間の握手会に来てくれたキョンさんですよね・・・。私、撮影で来てたのに更衣室が満杯で・・・。だからここで着替えてたんです・・・」
佳奈の色白な眩い裸体は、震えていた。アイドルの可愛らしい色白の顔は、その余りの恥ずかしさを表現するように、ピンク色に染まっていた。
しかし、相変わらず女の恥ずかしい部分は隠さずに、生まれたままの姿で男の目の前にいた。
もう、二人はアイドルと単なるファンではなく、一組の男と女だった。
「キョンさん、私、キョンさんが優しくて男らしい性格だから、好きになってしまったんです・・・。でも、やっとキョンさんに会えたと思ったらこんな姿で・・・。キョンさん、きっと、私のこと嫌いになっちゃいましたよね・・・」
佳奈のか細いカラダは全身ピンク色に染まり震えていた。気が付いたら、佳奈を優しく、抱きしめていた。
「佳奈ちゃん、嫌いになったりなんかしないよ。大好きな佳奈ちゃんを抱きしめられて、夢みたい・・・」
佳奈は僕に身をすっかり預け、その目はトロンとなって、かすかに潤んでいた。
愛する男に、抱きしめられた、女の目をしていた。
気がついたら、僕と佳奈は、狂った野獣のように、ビーチの岩陰で求め合っていた・・・。