遠いこの街で-1
桜の季節なんかとっくにおわり、今は残暑が厳しい時期だ。やることがあっても無くても時間の流れは止まらず過ぎていく。
オレが彼女に初めてあったのは、課題レポートを提出し終えた暑い日だった。いつものように、学部こそは違うが、同じサークルからよくつるんでいた奴らとだらけ気味に町を歩く。このメンバーがつるむと、やることは限られていた。
ましてや、今日なんか地獄から解放された事もあり目付きが違う。オレは一番後ろを歩き、あくびをしながらついて行った。
「だぁ〜!やっと終わった。休み明け課題ほどめんどくさいのないよな!?」
先頭を歩く古賀が背伸びをしながら不満を吐き出した。次を歩くタケシ(通称タケ)が指で車の鍵を振り回しながら同意の声をもらす。
「だよな。なぁ、課題も終わった事だし。ぱぁ〜っとナンパでもしにいかね?」
「おっいいねぇ!ひっかけるか?!」
タケの提案に古賀はノリノリで答える。解放感満載の今は完璧にギラついていた。当然この二人に彼女はおらず、気ままなフリースタイルを楽しんでいた。ある程度二人で盛り上がった後、オレの意見も聞かずに目的はナンパになった。
「なんだ、大(ヒロ)乗り気じゃねーな?」
タケが笑顔で振り向き問い掛ける。こっちは連日の課題提出を乗り越え完璧な寝不足でまいっていた。
「あんまし。お前らなぁ…よくそんなに元気でいられるよな?オレは寝たい。」
今は正直、女よりも布団がいい。そもそもオレ自身、誘われるから付いていくだけであって、軟派野郎ではないのだ。
「ヒロ〜、お前もっとこの解放感楽しもうぜ?腐るなよ。」
タケが盛り上げようとした時、言葉をさえぎって古賀が興奮しながら促した。
「おっ?とか言ってる間に可愛い二人組発見!年下ですけどいきますかっ!」
指差した先には制服を着た女子高生がいた。確かに可愛い顔をして、そんなにギラついてないオレの目にも止まるくらいだった。一人は制服を規定通りに着こなし、それでもくすむことなく可愛らしさが出ていた。もう一人は制服を着くずしてはいるが、だらしないわけではなく自分らしく着こなしていた。
「ねぇ、ちょっとそこの子たち!」
古賀が率先してしかけるが、結果は見事に大失敗。そのあと別口をつかまえて、結局はそっちと呑みまくっていた。
彼女に初めて会ったのは、ナンパという形だった。
結局完テツで騒ぎ明かし、そのおかげで、オレは土日バイトでもまれて週明けの今がふらふらな訳である。
一応は大学にむかって歩いてはいるが、全く学校に行く気がしない。そういや、最近ちゃんとした飯を食った記憶がない。
「人間、こうやって腐っていくんだ…。」
一つの人生論を悟ったところで後ろから名前を呼ばれた。