遠いこの街で-5
「いっそこの出会いにかけたらどうよ!?」
「…こりない奴だな。相手にも失礼だろうが。」
「いいじゃん。そんだけナンパされてるってこたぁよ?そんだけかわいいんだって。狙い目よ!?」
明らかに興味のない態度で熱く語るタケを見て目をそらす。そんなこと言われても自発的にナンパをするタイプではない上に、基本メンクイでもない。
「顔ね…。顔より飯だな、飯より金だ。顔で飯は食えねぇ。」
「お前はどこまで腐っていくんだ…廃人め。」
情けない。このお盛んな時期に老け込んだ台詞、もっとウキウキドキドキしてもよいのではなかろうか!?反論をするよりも、近くの電柱にしがみついて泣きたい気分だ。
「別に今は必要ねぇだけだって。分かったか?」
「っくぁ〜!納得いかねぇ!」
じたばたするタケに呆れられずにはいられない。よくよくまわりを見るとたくさんの学生が行き来していた。その中の制服を着た女子高生に目がいく。
もちろん、彼女のわけがなかった。その後、二人は別れてヒロはバイトに向かう為公園を通り抜ける。時間に余裕があるので一周することにした。この公園で会うことができたら奇跡に違いない。
だがその奇跡がおきた。
ヒロの動きが止まる。彼女は目の前のベンチに座っていて、物悲しそうに前だけを見ていた。
まさかいるとは思わなかった。でもどこか様子がおかしい、視線の先に何があるわけでもない。
とりあえず渡すものもある事だし近づいた。ヒロの気配に気付き視線をこちらに向ける。
「あっ…」
視線の正体に気付き、ふいうちをくらったように彼女は少し慌てた反応を見せた。
「借りてたものを返しにきた。あんたがかけてくれたんだろ?」
我ながら随分とそっけない言い方だと思ったが、これも性格なので仕方がない。
「ああ、わざわざありがとうございます。」
彼女はにこやかに笑い紙袋を受け取った。良かった、傷つけてはいないらしい。
「いや、こっちこそ心配かけたみたいで。…隣、いい?」
「あ、はい、どうぞ。」
本当は座るつもりなんか無かった、でも何故だか自然と言葉がでてきて体が動いた。しかし日頃の習性か座ると無意識のうちに一服態勢になってしまう。
煙草をくわえ火をつけようとした時に自分の行動に気付いた。
「あ、煙草…平気?」
「風上なんで大丈夫です。」
なるほど得意ではないらしい。比較的煙がいかないように気を付けながら吸う事にした。
隣に座ったはいいが話すことはなく、やけに煙草を吸う音が響く。