遠いこの街で-3
そして、三度め。またもや課題提出の為の徹夜明けでオレは腐っていた。風が少しだけ冷たくなってきてはいるが、まだ日中の太陽の威力は素晴らしい。
バイト先のコンビニ近くにある公園のベンチで、まるで昇天していきそうな気持ちを味わいながら煙草をふかす。
「あ゛ー…眠い…。」
真っ昼間から爽やかな公園でドス黒いオーラを出しまくっていた。あまりの眠さに、煙草が手から地面に落ちるほどだった。今まさに眠りに入りそうな瞬間、携帯が鳴り響く。
「はいよ…。」
「あ、ヒロ?お前今日のサークルどうすんだ?」
電話の主はタケだった。サークルなんてこと、頭から消え失せていたしバイトだし眠いしで、休むことを告げて電話を切る。
電話を切った時、自分の電源も切れたようにベンチの上に倒れた。肩も頭も打ったし、遠くで携帯が地面に落ちる音がしたが、そんなの気にするはずがない。
せめて、バイトまで…。
寝ようとした瞬間に、近くで叫ぶ声がして夢に終わった。
「大丈夫ですか!?」
目を開けるのもしんどい。でも明らかにオレに掛けられた言葉は心配そうで、さらに言葉を付き足した。
「具合でも悪いんですか?救急車呼びます!?」
いや、それは困る!眠いのを押し殺して、弁解しながらゆっくりと起き上がる。
「いえ…眠いだけなんで、すみません。」
「え…?あ、ごめんなさい。私てっきり…。」
親切な声の主は真実を知って慌てはじめた。そりゃいきなり目の前で倒れられたら、誰だってびっくりするだろう。
「いえ、ご親切にどうも。」
声の感じからして若い女性か?声の主を見ようと目を開けたら、そこには信じられない光景があった。
「本当にごめんなさい。」
彼女だった。
「あ、あんた…あの時の。」
思わず口が開いてしまう。目の前にいる彼女は、まさにあの時オレの友人たちのナンパを断った子だった。制服こそは着ていないが、間違いない。
「…どこかでお会いしました?」
いかにも知ってそうな顔をしたオレに彼女はたずねる。確か彼女をナンパした時あまりの興味なさに、オレは後ろをむいてあくびをしていたのだから顔を知る訳がない。
「あ、いや。ナンパ。悪かったなぁ、オレのダチがナンパしちまって。」
「え?あ…はぁ…。あの、本当に大丈夫なんですか?」
「何が?」
「顔色が悪いんですけど…。」
「あー…不規則な生活だからじゃねぇ?」
そう言いながら、再びオレはベンチに倒れた。驚いた彼女の悲鳴が聞こえる。
「ちょっ…大丈夫ですか!?」
「レポート完徹…眠い。」
「レポート…?」