トラブルの果てに-18
「……わかった」
松村主査はスーツのポケットからハンカチを取り出すと、首の辺りにあてながら久留米さんに頭を下げた。
寺内主事に至っては、ずっと気まずそうに下を向いているだけ。
でも久留米さんが今度こそ自分のデスクに戻って行くのを見送ると、二人ともあたしに向き直って頭を下げてくれた。
「……ごめんね、宗川さん」
二人は真摯に謝ってくれたものの、正直ムカつきはまだまだ収まりそうにない。
でも、これ以上この出来事を引っ張れば、悔し涙が出てきそうだったから、
「もうこんなことがないようにしてください」
とだけ言ってその場から離れるしかなかった。
お弁当を片付け、自分のデスクに向かい、一息ついた所で辺りを見回して見ると、県税課の方で電話をしている久留米さんの姿が目に入った。
何やらしきりにメモを取りながら一生懸命話している。
普段は気にも留めなかった光景なのに、さっきの彼の違う一面を見たせいか、しばらくその働く姿から目が離せなかった。