復活への道-8
静香の足はすぐに中央署に向かって歩き出していた。身なりは見窄らしいままだ。しかししっかりと見据えられた目と力強く地面を蹴る足取りだけは違っていた。周りの視線などまるで気にならない。バスや電車など使わず自分の足で中央署まで歩いた。
もう夕方になっていた。
「中山部長はいますか?」
「あ、はい…」
いきなりの皆川静香の登場に署員全員が驚いた。連絡を受けた中山が慌てて走って来た。
「ど、どうしたんだ…!?」
二度と現れないであろうと思っていた静香に思い切り動揺する中山。
「お話があります。」
「わ、分かった。じゃあ取り敢えず会議室に…。」
「はい。」
辞職しに来たのだと思った。しかし今までとは違う目の輝きに違和感を持った中山。しっかりとした意志を感じた。それが辞職を決意したものなのかどうかは分からなかったが…。2人は会議室に入った。
「復職します。」
いきなり言い放った静香に中山は更に驚く。
「えっ?辞めないのか?」
「辞めません。復職させて下さい。」
「だけどおまえ…」
あんなどん底で殆ど廃人だった人間の変わりように戸惑う中山。
「明日からお願いします。」
「あ、明日から!?おまえ、体調は…」
「もう平気です。明日から来ます。」
こちらの許可などお構いなし的な強い姿勢の姿勢にタジタジだ。
「今までご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。明日から宜しくお願い致します。」
深々とお辞儀をして出て行ってしまた姿勢。
「お、おい!…行っちゃったよ…。て事は今からお偉いさんに復職の許可を取って手続き済ませって事かよ。ムチャクチャだなぁ…」
一方的な態度に溜め息をつくが、その顔には微笑みが浮かんでいた。
「ま、上原君が見込んだ人間だ。そう簡単に辞められちゃ困るけどね。さ、許可許可…。」
静香の復職へ向け準備を進める中山だった。
翌朝、周囲の視線を釘付けにした静香。髪を整え、ブラウンに染めビシッとスーツで決めた静香に全員が驚いた。
「ご迷惑、ご心配をおかけ致しました。今日から上原さんの意志を継いで早く彼に近付け、そして追い越せるよう精進致します。どうか宜しくお願い致します。」
その表情に甘えは消えた。凛としたいい表情だ。
「いい顔になったね。」
引きこもり中に色々心配してくれた角田が話しかけた。
「これからもっといい顔になりますから。」
ニコッと笑った静香は素敵だった。以来、皆川静香は変わった。