復活への道-2
静香がようやく落ち着いた頃、麗子は言った。
「実はね、お腹の中に赤ちゃんがいるのよ、今。」
「えっ!?」
「今日ね、病院に行って分かったの。去年あの子を産んだばかりなのにまたよ?高齢出産はきついんだから。あなたは若いうちに産みなさいね?」
驚いた。新たな命が麗子のお腹の中に存在する事を。
「私達には高校生の娘がいるの。若菜っていうの。葬儀の時見たでしょ?」
「はい…」
「その若菜がね、警察に入るって頑張ってたのよ、ずっと。」
「えっ?」
「正芳に内緒で勉強してたのよね。将来お父さんと一緒に悪い人等を捕まえて世の中を平和にするんだって、ね。殆どヒーローごっこ気分よね。でもあの子は必死で勉強してるわ?今年は勝負の年だからね。でもこんな事になっちゃったでしょ?だからどうするのか聞いたの。そしたらやっぱり警察に入る夢は変わらないって。親子よね〜。世の中の平和は私が守るからって正芳のお仏壇に手を合わせて今朝言ってたわ?」
穏やかな笑顔で話す麗子。静香は麗子の話を聞き入っていた。
「正芳はきっとあの子が自分と同じ道を歩みたがっている事を知ってたと思うわ?口にはしなかったけどね。でもきっと嬉しかっと思う。警察という職業柄、犠牲にしなきゃならない事がたくさんある。それを若菜が分かってくれてるって事だもんね。でも心配だったはず。刑事と言う仕事がどんなに危険か知ってるから。複雑だった事は確かね。」
一度息をゆっくり吐いてから言葉を続けた。
「正芳は立派に育てたい女性の部下がいるって言ってたわ?」
「えっ?」
「そう、あなたよ?あの人は正義感が強い人が好きなの。それに男の部下を引き連れて捜査を引っ張る女刑事ってカッコいいよなぁってニコニコしながら言ってた。どんなに厳しくして落ち込んでもついてくるあなたがお気に入りだったわ?」
「…」
嬉しかった。素直に。
「きっと娘のように思ってたのね。もしかしたら若菜を教育してるつもりであなたを育ててたのかも知れない。だったなら娘の危険を命がけで救ったのは当然の事。あの人に後悔はないと思う。強いて言うなら、せっかく命がけで救ってやったんだから刑事辞めんじゃねぇぞ??、かな?」
「上原さん…」
正芳の親心に触れたような気がした静香の涙は止まらなかった。麗子は静香の肩を抱いて優しい笑顔を差し向けていた。