湯島武史との決別-3
突然の登場に驚いた田口。麻耶とは割と頻繁に顔を会わせているが、田口にとって神2人のセットは相当緊張を齎すものであった。
「麻耶さんまでどうしたんですか?」
麻耶が座る。
「田口君、警察で取り調べされたよね?」
「はい。」
ドキッとした。麻薬売買の事は麻耶には知られないように活動していたからだ。
「コカイン所持容疑だったよね?」
「はい。でも俺はそんなもん持ってもいないし…」
「使ってもない。体内から検出されなかったしね。」
「はい。だから何もなく済みましたが、何か…。」
麻耶は神妙な顔つきで言った。
「今、警察は麻薬売買の容疑である男をマークしてるわ?」
「えっ?誰ですな?まさか俺!?」
「違うわ?田口君じゃない。」
「じゃあ誰…?」
麻耶は田口の目をジッと見ながら言った。
「高田道彦と喜多和典…。」
「え…!?」
驚いた。というより2人に迫る危機に不安を抱いた。
「彼が立ち上げた会社、R4コーポレーションと暴力団との関係が明らかになって、そのR4が麻薬売買で稼いだお金が暴力団の資金源になってるという疑いがかかってる。近く強制捜査が入る予定なの。」
「嘘だろ…!?」
田口は高田の仕事についてあまり知らされていなかった。ただコカインを売る手伝いをしている事ぐらいしか接点はなかった。
「おまえ、確かにやってはないが、売ってはいるだろ…?」
田口は沈黙した。
「高田はいい奴だ。面倒見もいい。麻薬売買をしていても俺は非難するつもりはない。でもな、おまえはもう関わるな。人生をやり直すには若すぎる。高田がおまえを深く仕事に関わらせないのはおまえを守る為だ。奴の優しさだ。おまえが仮に捕まっても無関係を主張するだろう。高田はおまえをいつでも足を洗える状態にしているんだ。足を洗うには今だよ。分かるだろ?」
(さすがアニキ…全部お見通しだね。)
自分がしてい事は全部知っていそうだと感じだ。
「もういつ捜査が入ってもおかしくない状況なの。田口君、もう関わらないで!!」
本当に心配してくれている2人がありがたく感じた。