頭の中で鳴る警報-9
――よくできました。
陽介は、チュッとあたしの唇に吸い付いてから優しく指先だけで快感のスイッチを入れた。
「あっ、ああっ、やあっ」
汗ばんだ身体がその度にビクンビクンと跳ね上がる。
――くるみ、気持ちい?
「あっ、あっ……いいっ、気持ち……いい……!」
指を二本に増やして、中の愛液を掻き出すように指を動かしていくものの、もはやそれだけでは我慢できなくなってきた。
そんな現実(リアル)のあたしの気持ちと、連動した陽介の幻がそっと耳元で囁く。
――くるみ、もう俺挿れたいんだけど。
彼にとって、あたしがよがっている姿はすごくそそられるみたいで、最初は主導権を握っていた陽介も、あたしが感じれば感じるほど余裕がなくなってくると言われたことがある。
あたしも陽介が欲しい。指なんかじゃ足りない。指なんかじゃ……。
「…………」
あたしはベッドに仰向けになったまま、枕元のすぐ横にある小さなチェストの引き出しを手探りで開けた。
「……はあ、はあ」
そうして手に持ったのは、ピンク色したバイブだ。
こういうアダルトグッズを使うのは、男に縁がない寂しい女だけ、と今まで思ってたけど……。
あたしは、ゴクリと喉を鳴らしてからこれを使うきっかけになったあの日のことを思い出しながら、ソレをゆっくり秘裂にあてがった。
◇
これは、昔付き合ってた男があたしに買ってくれたもの。
これを使ってセックスしてみたいと買ってきたそうだが、こういうものは、男と交わることが出来ない女が使うもの、と思ってたあたし。
それを使われるのはプライドが許さなくて、思いっきり突っ撥ねてやった。
――そんな変態みたいな真似したいなんて、キモい。
すごく冷めた目で、そう吐き捨ててやったっけ。
結局、それが銃爪となってその男とは別れることになった。
ソイツと別れたことに後悔はない。困ったのはそれの廃棄方法だ。
自分のゴミ袋に入れたとしても、カラスがゴミを漁って中身が出たら大変だし、モノがモノだけにコンビニとか駅に捨てる時に誰かに見られていたら大変だ。
すっかり持て余してしまったソレ。
いつか捨てなきゃと思いつつ、引出しにしまいっぱなしにしたまま、いつしかそれも頭の隅に追いやられて、バイブそのものの存在をすっかり忘れてしまっていた、そんなある日。
「へえ、くるみってこういうの使ってんだ」
と、陽介がニヤニヤしながらお風呂上がりで身体を拭いているあたしの目の前に、ソレを見せつけてきた。