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女子大生 成宮恵理
【女性向け 官能小説】

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女子大生 成宮恵理-8

勘違いしてた。

トムクルーズといったらミッショインポッシブルくらいしか観た事がなかったから。

それにキャメロンディアスってあのチャーリーズエンジェルの人でしょって程度にしか知らなかったから。

そのトムクルーズとキャメロンディアスが共演してるんだから当然バニラスカイってタイトルからして気分爽快になるようなアクション映画だろうと、勘違いしてた。

思った以上に濡れ場というか、SEXのシーンが多い。

決してイヤらしい映画ではないし、そういうシーンを見たからといって顔を赤らめたりキャーキャー騒ぐ年頃でもない。

正直、一人で見ていれば何とも思わないシーンなのだけれど、隣に悠一郎がいるとなんだか凄く気まずい。

トムクルーズが懸命にベッドを揺らしている映像を、ド真面目な顔で眺める二人。

トイレに行くフリでもしてこの場から立ち去りたい。けどそれをしたら変に意識しているみたいに思われそうだからできない。

早く!早く次の場面に切り替われ!

恵理がそんな事を念じていると、隣の悠一郎が突然口を開いた。


「酒でも飲むかぁ。」


「え?」


「恵理も飲むだろ?」


「……うん。」


悠一郎はテーブルの上に置きっぱなしだった缶ビールと缶チューハイに手を伸ばし、缶チューハイを恵理に渡した。

いくつかのつまみを口の中に放り込んでビールをグビグビと飲む悠一郎。

恵理もソファの上で体育座りになって身体を小さくすると、缶チューハイに口を付けた。

お酒は好きだけど、アルコールには弱い体質の恵理。

一口飲んだだけで身体が中からポッと温かくなって、飲み続けていたらあっという間に頭がボーっとしてきた。

そして恵理はほんのりピンク色に染まった顔でそっと隣に顔を向ける。

悠一郎の横顔。

最初は目を動かして何度かチラっと見るだけ。

でも悠一郎が映画に集中していてそれに全く気付いていない事が分かると、気付いた時にはじっと悠一郎の横顔を見つめてしまっていた。


こうやって見ると、悠一郎はやっぱりカッコイイ。

たぶん一般的に見て、所謂イケメン≠フ部類に入ると思う。

スッと鼻筋が通った整った顔立ちをしているし、肌もニキビ1つ無くて綺麗だし。オマケに背も高いし。

よく考えたら悠一郎ってモテるだろうなぁ。

いつも3人でいる時の悠一郎しか奈々は知らなかった。

だからバイト先とか、知らない所で悠一郎に言い寄ってくる女の子は多かったのかもしれない。

いや、普通に考えてこの顔で、男女関係なく気軽に話ができるような男がモテない訳がない。

でも悠一郎自身は恵理の前でそういう話はした事がなかったし、微塵もそういう雰囲気を出していなかった。

だからきっと心のどこかで安心していたんだと思う。

悠一郎は誰かの所に行っちゃったりはしないって、何の根拠もないのに思い込んでいたんだ。


「……。」


恵理はトムクルーズの映画に引き込まれる事はなく、途中からは殆ど見ていなかった。

その代わりに悠一郎の横顔に夢中になる。

どれだけ見つめていても飽きが来ない。

このままずっと、きっと何時間でも見つめていられる、そんな気さえする程。

ソファの上で2人で分けている布団の中が温かい。

この温かさは自分の体温でもあり、悠一郎の体温の温かさでもある。

なんだかヌクヌクしてとても心地が良い。

お酒が回っている気持ち良さとその温もりが、恵理の心を溶かしていく。


「……悠一郎君……」


横顔を見つめながら無意識の内に悠一郎の名を小さな声で呟いてしまった恵理。

言ってしまってから自分でハッとした。


「ん?なんか言った?」


「う、ううん!な、何でもないよ。」


恵理は顔を真っ赤にして慌ててそう返事をした。

部屋が薄暗いから恵理の顔色は分からなかったのだろう、悠一郎はそれを気にする事なく再び画面に目を向けた。

しかし恵理の胸の高鳴りは止まらなかった。

溶け始めた心がドキドキと熱くなっていく。

2人きりで、すぐ隣に悠一郎がいる。恵理はその状況を再認識した時、ある種の興奮を感じてしまっていた。

少し布団の中で手を伸ばせば悠一郎に触れる事ができる。

本当は悠一郎の方に傾けるようにして身を寄せたい。

悠一郎君と手を繋ぎたい。

ギュって抱きしめられたい。

もし悠一郎にそうされたら心が全部溶けきって、その中に詰まった苦しい想いを全部曝け出してしまうだろう。恵理自身、それは分かっていた。

だから心も身体も磁石のように悠一郎に引き寄せられるけれど、それをギリギリのところでなんとか我慢する恵理。

それは決してしてはいけない事だし、できない。

だって悠一郎君は奈々の彼氏なんだから。

これが友達≠ニしての限界の距離感。これ以上近づく事は恵理の方からはできない。


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