女子大生 成宮恵理-29
「ねぇ悠一郎君、ちょっとあっち向いてて。とりあえず服着るから。」
「え、別にいいじゃん、そのまま裸で行けば。」
「いいから、恥ずかしいの。その……見られるの……」
「ハハッ、分かったよ。」
悠一郎が背中を向けると、恵理は裸のままベッドが出て服を探した。
そして下着や部屋着を着ると、タオルと着替えの服も用意して浴室へ向かった。
恥ずかしがりながらも、悠一郎と朝を迎えた事が嬉しいのか、恵理は表情には笑顔が混じっていた。
朝起きて、隣に好きな人が寝ていたら、誰だって心の底では嬉しくなってしまうものだ。
脱衣所でもう一度裸になって浴室に入り、シャワーを出して、しばらく無心でぬるいお湯を浴びる。
あんなに沢山セックスをしたのは初めてだったし、あんなに沢山感じてしまったのも初めて。
だからやっぱり少し身体が重く感じる。
ザーという音を立ててお湯が流れていく。
頭の中が少しずつクールダウンしていって、次第に冷静さを取り戻していく恵理。
悠一郎と一緒にいる事も、朝少し驚いてしまった事も、一旦リセットされる。
そして、突然ハッと現実が頭の中に降りてきた。
「なにやってるの……私……」
自然とそんな言葉が口から出る。ふと客観的に自分自身を見つめてしまった。
そしてここで漸く恵理は自分が犯してしまった罪に気付く。
「……私……私……大変な事を……」
どうしよう……どうしたらいいの……
頭の中に降りてきた現実に、心が潰れそうになって、パニックになる恵理。
悠一郎がパンツ1枚の姿でソファで寛いでいると、浴室の方からドタバタと騒がしい音が聞こえてきて、髪を濡らしたまま慌てて服を着た恵理が出てきた。
「どうしよう!どうしよう!私どうしたらいいの!?ねぇ、どうしよう……ああ…やだもう……」
そんな常軌を逸した恵理の様子に悠一郎も驚く。
「おいおいどうしたんだよ、落ち着けって、なぁ、どうした?何があった?風呂でゴキブリでも出たのか?」
「違う!違うよぉ、ゴキブリなんかじゃないってもう……ああどうしよう……」
「え!?じゃあムカデか、刺されると大変だもんな。ちょっと待ってろ俺が退治してやるから。」
「だから違うって!……あーもう……どうしたらいいの、ねぇ私どうしたら……」
「おいどうしたんだよ恵理、俺には何が何だか……」
恵理の言っている事が全く理解できないでいる悠一郎は困惑した表情をしていて、恵理はその前でガックリペタンと床に座り込んでしまう。
「私……最低だ……奈々になんて言ったらいいの?どうしよう……奈々……ああ……」
恵理はそう言って両手で顔を覆うと、まるで小さな子供のように涙を流しながら泣き崩れた。