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〈亡者達の誘う地〜刑事・銭森四姉妹〉
【鬼畜 官能小説】

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〈晴らすべき闇〉-2

「暗いなあ。どうしたの?」


目を細めて笑う刑事は、文乃の先輩の喜多川景子という女性で、年齢は27才を数えていた。
栗毛色の長い髪はサラサラとなびき、通った鼻筋と緊張感の漲る眉と瞳は、男顔負けな凛々しさがあった。
伸びやかな肢体は顔に吊り合う緊張感に満ち、灰色のスーツさえ鋼の鎧のよう。
麻里子や文乃に劣らぬ逮捕術の技術を持つ彼女は、春奈にはとても眩しく見えていた。


「最近、麻里子さん見ないわね?」


その言葉は気遣うものではなく、少しだけ不満げだ。なにしろ数週間も無断欠勤しているのだから、無理も無い。
そして、その言葉の放つ雰囲気の理由を、春奈は知っていた。


誰にも媚びぬ麻里子は、他人から見ればかなり生意気に映り、それは先輩刑事から見ると不愉快なものであった。
怖じけづく事も無く意見を述べ、行動で結果を出せる麻里子……だがそれは、景子も同様であった。

多少の年齢の差こそあれ、景子も麻里子も同じような気性を持ち、己の正義感を信じた行動しかとらない。景子の麻里子への嫌悪感は、単なる同族嫌悪の類いであり、心の底から憎んでいる訳ではなかった。
だからこそ塞ぎ込む春奈を気遣い、声を掛けたのだ。素直になれないまま、あの生意気な後輩の“今”を知ろうとしたのだ。


「……喜多川先輩……私の話、聞いてもらえますか…?」


春奈もまた、祖父から言われた守秘義務を破り、景子を頼った……自分一人だけでは真実は掴めないと、思い知らされていた……それは己の無力さを痛感し、自覚したからに他ならない……。


「……此処じゃアレだし、私の車に行く?」


春奈は力無く頷くと、景子の後を追うように署を後にすると、すっかり暗くなった駐車場に止まる、白い欧州製のクーペの助手席に乗り込んだ。
黒革とアルミの内装は、シンプルでいながら野暮ったさも無く、景子とよく似た緊張感漲る空気を発散している。
やや狭い車内は囲まれ感も強く、しかしそれは、しっかりと守られていると感じられる頼もしさがあった。


「……実は………」


春奈はこれまでの経緯を全て話した……美津紀と文乃が消え、八代との、麻里子と瑠璃子との関係を……春奈の告白が進むにつれ、景子の表情から好奇心の混じる笑みが消えていき、その瞳には険しさが色濃くなっていった……とても作り話とは思えない陰欝なストーリーに、景子は戦慄していた……。


「……ちょっと走ろうか…?」


景子はアクセルを踏み込み、荒々しいエンジン音を唸らせて街を駆け抜けた。
春奈の告白は衝撃的に過ぎ、落ち着けない自分を宥める為に車を疾走させる。

どう考えても一連の事件には八代が絡んでいるとしか思えず、しかし、とても犯罪に手を染める人物とも思えない。

確かに数週間前に、八代が上層部と何やらやりあっていると、仲間の刑事から聞いていた。

それが麻里子が消えた時だったとしたら、上層部に捜査を進言したのは演技だったのか?

自分に嫌疑が及ばないよう、目暗ましの為の、必死の意見具申だったのか?

考えれば考える程、八代が怪しく思えてしまうし、春奈の言葉と符合していく。



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