〈晴らすべき闇〉-10
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『お前ら聞いたかよ?「なんで隠すようなコトを言うのかしら?」だとよ。刑事気取りのお嬢さんがよぉ』
専務は唇を尖らせて春奈の物真似をしながら、部下に向かってふざけていた。
偉そうに仁王立ちになっていても、手足がプルプルと震えていては様にならず、結局は専務達の失笑を買っていただけだった。
『でも、一緒にいた刑事もイイ女でしたね。凄い性格キツそうですよ?』
『アイツも狩って売り飛ばしましょうか?』
『当たり前じゃねえか。あの女ならタムルも金を惜しまねえだろ?』
春奈の訪問が予想外の出来事なら、景子の訪問もまた、専務達には想定外だった。
麻里子に勝るとも劣らない美貌の刑事は、専務の心を鷲掴みにしていた。
猫科の猛獣のような迫力を持った麻里子とは違い、冷水を滴らせた日本刀のような冷たい美しさは、間違いなくタムルを歓喜させるに違いなく、絶対に逃したくない獲物だ。
『八代の野郎、なにがお茶を濁せだ。あんなイイ女が居るじゃねえかよ』
腹は決まった。
春奈と、そして一緒に現れた女刑事を狩ると。
『原木は全部降ろしたんだろ?今日はもう作業やめて明日のメンテナンスに備えとけ。これから忙しくなるんだからよぉ』
獲物が決まったなら、後は情報収集と捕獲作戦を練るだけ。
そして実行するタイミングを計るだけだ……。