黒い鷹-6
「い゛?!」
バカンッ
嫌な予感がして1歩退いた瞬間、ドアが木っ端微塵に吹き飛んだ。
「バートン?大事なお客様だと言っただろう?ちゃんとご挨拶してくれ」
デレクシスはにこぉっと笑顔を浮かべているが、ドアを吹き飛ばす時点で問答無用というか何というか……スランバートは両腕を上げて、バラバラと降ってくるドアの欠片から自身を守りつつ覚悟を決めた。
「よ……よぉ……久しぶりだな……」
スランバートはデレクシスの前に座る2人……愛する女カリオペと、愛する男ゼインに間抜けな挨拶をするのだった。
ゼインは「やっぱりな」という顔をしていた。
鋭い嗅覚の持ち主なので、要塞近くに来た時点で気づいたのだろう。
カリオペは驚愕の表情から一気に怒りの表情に変わり、バッと立ち上がった。
そのまま足音荒くスランバートの前まで来ると、素早い動きでスランバートを張り倒した。
スッパーン
と、小気味良い音が響き、頭の中がくわんくわん鳴る。
「……いっ……てぇなっ!いきなり何だよ!?」
まさかいきなり張り手が来るとは思っておらず、スランバートは叩かれた頬を押さえてカリオペに怒鳴った。
「スランの嘘つき!!」
「はあ?」
いったい何の話だ、とスランバートは目をパチパチさせる。
「中出し禁止って言ったじゃない!してないって言ってたクセに!」
カリオペの言葉の内容に、1度だけ彼女を抱いたあの時の事が思い出された。
「嘘なんかついてねえよ!中出ししてねえっつうの!」
「じゃあコレはどう説明すんのよ!!」
「コレ?」
すっと横にずれたカリオペの後ろにはゼインが居た。
そのゼインは腕に小さな男の子を抱いている。
「お前な……自分の息子をコレ呼ばわりすんなよ」
「……う……ごみん……つい……」
顔をしかめたゼインにカリオペは素直に謝った。
「……息子……?」
子供が出来たのか?しかし、ゼインには子種が無い筈だが……。
「あんたの息子だよ、スラン。3歳なんだ」
「俺ぇ?!」
スランバートは素っ頓狂な声を上げて、ゼインが抱いている子供を見る。
黒い髪にルビー色の目はカリオペ似だが、顔はスランバートそっくりだった。