黒い鷹-5
そのデレクシスが不意にスランバートの方を向いた。
「ス……バートン!夕方に大事なお客様が来るんだ。夕食前に挨拶に来てくれないか?」
「大事な客?」
「物凄〜く大事なお客様なんだよ。頼んだからね」
ニコッと笑ったデレクシスの目に、何か企んでいる光を見てスランバートは顔をしかめる。
(な〜に考えてんだろな……)
デレクシスの考える事は良く分からない……だからこそ一緒に居て面白いのだが、大抵はスランバートに被害が及ぶのだ。
(……用心に越した事は無いか……)
言われた通りちゃんとした服装で行くが、武器も携帯しておこう……そう考えるスランバートなのであった。
夕食の時間が近づき、スランバートはデレクシスの部屋へ向かう。
隠し武器も準備したし、もしもの時の為に金と大事な物は携帯した。
何で上司の客に会うのにここまでしなきゃいけないんだろう、と疑問に思いつつデレクシスの部屋のドアをノックする。
「バートンです」
「入って良いよ〜」
返ってきた呑気な声に、イラッとしながらドアを開けたスランバートは……………………………客を見るなりそのドアをバタンと閉めた。
(…………………は?)
デレクシスの前に座っていたのは奴らじゃなかったか?
スランバートが愛した、あの2人ではなかったか?
スランバートの身体から嫌な汗が吹き出し、ドアノブを握った手がカタカタ震える。
もう会うつもりは無かったのに……次に会ったら、あの2人をぶち壊してしまいそうで……それだけは絶対にしたくない。
2人が多少なりとも自分に好意を持っているのは自覚している。
だが、スランバートはあの2人がお互いを愛している姿が好きなのだ。
そこに自分が居ると2人の間がギクシャクしてしまう……それはそれで可愛いのだが、そんなのをいつまでも見ている程趣味は悪くない。
(あんの……クソ王子っ……!)
よりによってあの2人?というか、デレクシスは自分達の関係を知っているのか?いやいや、知る筈が無い……しかし、まさか知り合いだとは……。
頭の中がぐるぐるしているスランバートの目の前のドアが、メキメキと音を立てた。