黒い鷹-4
超エリート暗殺者の俺に敵うならな、という嘲りを込めた言葉だったのだが、デレクシスはぱあっと顔を輝かせた。
「ああ!良いとも!一生懸命頑張るよ!」
「……あんた……ホントに馬鹿だろ?」
毒気を抜かれたスランバートは、萎える気持ちを抑えられなかった……。
それからデレクシスは、理想郷を作る為に暗躍した。
南の大陸全土の国々が絡んで来るので、表向きは立派な要塞。
しかし、実際は異種族それぞれが快適に暮らせるような環境作りに力を入れていた。
始めは馬鹿にしていた要員達も、デレクシスの夢見る理想郷を見てみたくなり協力するようになった。
クラスタ要員になったのは殆どが冒険者だったので、元々無謀な挑戦が好きな連中だったのだ。
―――――――――――
昔の事に思いを馳せていたら、あっという間に要塞に着いた。
鷲から降りると要員達がわらわらと集まってくる。
「おかえり、デレクシスさん。どうでした?」
要員の1人がワクワク顔で聞いてきた。
「逃げられてしまったよ。人間の言葉を話す魔物なんて珍しいのになあ」
「そっすか、残念でしたね。でも次がありますよ」
「そうだね。気長にやるよ」
「ザック、お疲れさま」
『クエェ』
「よしよし、美味しい果物用意してるぞお」
小型化した鷲型の風の精霊ザックは、声をかけた要員の肩にとまる。
「デレクシスさん。西側の柱なんスけど、強度上げるにはやっぱ反対側もやんねぇとバランスとれないッス」
今度は要塞を建てている建築士。
「そうか、同時進行でいけるかい?」
「了解ッス」
「おう、坊主。怪我ぁ無かったか」
更には医者紛いの親父。
「私は大丈夫です。バートンを診て下さい」
「おう。来いや」
親父に呼ばれたバートンは、大人しく彼についていく。
少し振り向いてみるとデレクシスは沢山の要員に囲まれ、ニコニコ対応していた。
無謀で壮大な夢を見る王子様……始めこそ孤立気味だったが、今は沢山の仲間達が居る。
別に認めたワケでは無いが、その夢を直ぐ横で一緒に見る事が出来るのは悪くない気分だ。