黒い鷹-3
「私はカイザス国第3王子デレクシス=J=カイザス。ようこそクラスタへ」
それが軽薄王子改め、精霊王子デレクシスとの出会いだった。
―――――――――――
「全く……俺を囮に使うの止めて下さいっつうの……」
スランバートは鷲の背中でコキッと首を鳴らす。
「仕方ないじゃないか。要塞内で魔物に物怖じしないで更に強い人間なんて君しか居ないんだから。適材適所だよ適材適所♪」
「あのな、適材適所でもこうしょっちゅう駆り出されたら死ぬっつうの」
「だから、既に死んでいる人間なんだから今更死んでも……」
「スランバートは死んだけど、バートンは生きてんの!!」
人をゾンビか何かの様に言うな、とスランバートは怒鳴る。
鷲を砦に向かわせたデレクシスは、悪びれもせずクスクス笑った。
結構、酷い事をされているのに、こういう顔をされると怒るに怒れなくなってしまう。
(特な性格だよな)
世間知らずの甘ちゃんな王子様……始めは舐めていたが、何のその……彼は非常にしっかりした男だった。
―――――――――――
「理想郷を作りたいんだ。魔物も精霊も……異種族が共存出来る場所をね」
要塞を作りながらこう宣ったデレクシスに、要員全員が失笑した。
流石、甘ちゃん王子だ……そう思って誰も相手をしなかった。
勿論、スランバートもそう……ある程度金が貯まったらこんな危険な場所からはおさらばしようと思っていた。
……なのに。
「ねえ、そこの真っ黒い君。ログの『黒い鷹』スランバートだよね?」
話した事も無いのに、そう呼ばれて心臓が止まる程驚いた。
「ははっ正解?暗殺者の身のこなしだよね君。ねえ?私の右腕になってくれないかな?」
そして、この提案にも驚いた。
「あんた馬鹿か?暗殺者って分かってて側に置こうって?ターゲットがあんただったらどうするつもりだ?」
「ターゲットが私だったらとっくに殺されてるよ?君は優秀な暗殺者だからね。だからこそ側に置きたい。私は君が信用に値する人物だと思うんだ」
「何を根拠に?」
「ふふふ〜内緒。私の勘……という事にしといてくれよ。どうする?」
含み笑いではぐらかされたのが気になって条件を出した。
「……そうだな……俺があんたを認める事が出来たら、考えよう」
俺の上に立つ事が出来るか?との挑戦だ。