アンバランス-1
西の大陸、魔法大国ゼビアに滞在していた南の大陸カイザス国の第3王子デレクシスを護衛する事になったアンバランスな2人、ゼインとカリー。
あちこち寄り道をしながら色々と教えてやり、通常1ヶ月の道のりを3ヶ月程かけてやっと東の端の街に辿り着いた。
西の大陸、海の玄関口として有名な街ジェリーには大きな港があり、世界の中心であり交易の中心である島国ファンに出航する船が沢山停泊している。
「やっとここまで来たねぇ」
デレクシスは背筋を伸ばすように両手を上げてう〜んと伸びた。
「ファンに寄ってからカイザスだな」
ゼインは屈伸してからデレクシスと同じようにう〜んと伸びる。
「はい。じゃあ船のチケット買いに行こうか?デレク1人で行ってみて?」
「りょ……了解」
「値段比べて交渉して出来るだけ安くね?肉体労働つきで構わないならそれ選んで。身分はバレないように、南の船は避けるんだよ?」
「分かった」
3人分の料金を渡されたデレクシスは、緊張しながらお金を懐の奥にしまう。
何度か財布をスられて大変な目にあった……主にカリーに怒られて大変な目にあったのだが……。
右手と右足が同時に出る程緊張しているデレクシスを見送り、カリーは近くのベンチに腰を下ろした。
「ふうっ」
3ヶ月あまり一緒に居て色々教えてきたが、甘ちゃんな性格はやっぱり甘ちゃんなままだった。
財布がスられるのは勿論、騙されて金を渡したり非常食を渡したり……果ては幸福の壷を売り付けられたり……まあ、人を信じるのは良い事だが度が過ぎるというか何というか……それがデレクシスの良い所だと言ってしまえばそれまでだが、面倒を見る方の身にもなって欲しい。
こうやって任せておきながらも、何時でもフォロー出来るようにカリーはデレクシスの周囲に目を光らせていた。
「……大丈夫か?」
気苦労が絶えないのもあるが、カリーの様子がおかしい。
ゼインはカリーと同じようにデレクシスに注意を向けたまま、カリーを伺う。
「な〜んか疲れ易いんだよねぇ……身体も重いしさぁ」
「風邪でもヒいたか?」
眉を潜めたゼインはカリーと額を合わせてみる。