アンバランス-3
ミヤはあれまあ、という顔をしてカリーを伺う。
ゼインには黙っていた方が良かったかしら?という感じだ。
「あ……あの……今……何ヶ月……?」
思っていたのと違う反応に、ミヤはおや?と思いつつ答える。
「4ヶ月……といった所ですわね」
「……4ヶ月……」
カリーはムムッと一気に不機嫌な顔になり、スクッと立ち上がった。
「ありがとうございました」
そのままペコンと頭を下げて、カリーはすたすたと部屋を出ていく。
「おいっ?!カリー?!……ぶっ」
目の前でバタンと荒くドアを閉められ、ゼインは鼻面をぶつける。
ぶつけた鼻を擦りながらミヤにペコペコ頭を下げたゼインは、慌ててカリーを追いかけた。
カリーは中庭に面した回廊を足早に歩いていた。
「待てっ、待てっば」
ゼインに手を握られ、カリーはやっと足を止めた。
「はぁ……んだよ?心当たりあんのか?」
「……ゼインだってあるでしょ……」
カリーの低〜い声の言葉に、ゼインは頭を捻る。
4ヶ月前といえばアメリアを拾って、薬を届けて、それからファンに……。
「あ!スランか!」
あの時期にカリーが寝た相手など、ゼイン以外ではスランしか居ない。
「そおよ!あの馬鹿男!!中出し禁止って言ったのにっ!出してないって言ったのにぃ〜〜〜っ!!」
カリーは怒りに任せて床をダンダン踏みつける。
「……そうか……スランか……」
ゼインはカリーを掴んでいる手とは逆の手で口元を覆った。
「……なぁによぅ……嬉しそうな顔しちゃってぇ」
カリーはじと目でゼインを睨む。
「へ?」
「さっきまで『あり得ねぇ』とか言ってたクセに!スランだって分かった途端、喜ぶってどぉいう事よぉ!!やっぱりスランなんか大っ嫌い!!」
ゼインを睨むカリーの目から涙がボロボロ溢れ、ゼインはオタオタする。
「いや……だって……」
「だから嫌なのっ!ゼインは喜ぶもんっ!他の男だったら戸惑うでしょう?!でも、スランだったら嬉しいでしょ?!だから嫌なのよっ」
ゼインはスランが好きだから。
つまりは妬いているのだ。
「……スランなんか……大っっ嫌い……」
声を落としたカリーは、床に落ちる滴を揺れる視界越しに見つめる。