Dr.feelgood-11
正芳が目を付けた少年は当然田口だ。一緒にいる少女は愛理。田口は近づく人影をチラッと見たが、特に気にする様子もない。
「ちょっと君達、いいかな?」
正芳は田口達に話しかけた。
「何でしょうか?」
「こんな時間に高校生がフラフラしてちゃいけないだろ?」
田口は面倒臭い顔を浮かべる訳でもなく普通に言った。
「最近の高校生は忙しいんで、ね。」
静香から見れば生意気に思える。愛理も若干笑みを浮かべているようで嫌な印象を受けた。
「その制服は城都高校だね?塾の帰りか?」
そう言って警察手帳を提示する。しかし全く動揺しない2人。
「ま、そんなとこです。強いて言うなら塾の帰りに大好きな先輩を口説いてホテル行こうと頑張ってるとこですかね。アハハ!」
「抱かせないって♪」
愛理が笑う。静香は2人の神経が理解できない。
「おじさんだって今から仕事終わったらそのオネーサンを口説いていい事しちゃうつもりでしょ?」
馬鹿にする愛理に静香がムキになる。
「そんな訳ないでしょ!!」
挑発に乗る静香を宥める。
「まぁまぁ、あいにくオジサン、そこまで盛んじゃないからね。残念だけど。正直に言おう。この写真は君だね?」
持っていた写真を見せた。
「はい。そうです。」
「実はな、麻薬所持で補導した少女が今日、君からコカインを買う約束をしているという証言を得たんだよ。何かの間違いかもしれない。でも君の無実を証明する為にちょっと署まで来てくれないかな?」
静香は2人が逃げ出さないように警戒する。しかしそんな静香を見てニコッとしながら言った。
「別に逃げませんよ。いいですよ?行きますよ。」
「そうか、ありがとう。」
「いえ。」
潔すぎる2人に正芳はシロの匂いがプンプンした。しかし補導した少女の話では田口本人もコカインを使用しているとの事だった。最終的には体内検査までするつもりだ。シロならシロでそれでいいと思った。少年が麻薬に関わっているなど悲しい話だ。どちらかと言えばシロである事を願っていたりした。