彼の名は-2
大学を卒業して地元に帰ってきたあたしは、Uターン就職の波に乗れなかった落ちこぼれ。
でも、もともと楽観的な思考のあたしは、結婚して専業主婦にでもなれたら人生万々歳くらいにしか考えてなかったから、実家に帰ったらフリーターにでもなろうと、気楽に構えていたのだ。
でも、そうは問屋が卸さない。
真面目で堅物なあたしの両親は、あの手この手で地元の知り合いのコネを使い、市内にある合同庁舎の臨時職員の話を持ち込んできた。
臨時というだけあって、任用期間は2年と定められている。
でも母はこの2年を利用して、勉強しまくって、県職員の試験に合格しろと無理難題をあたしに言ってきた。
頭の悪い三流……いや四流大学を単位ギリギリで卒業したあたしには、そんなのはなっから無理だとわかりきっていたから、母の話を右から左へと聞き流していた。
最初こそ、“勉強しろ”の一点張りの母だったけど、暖簾に腕押し状態のあたしに、県職員になる道は到底無理だと悟ったらしく、次なる手として、
「だったら、県職員の旦那さん候補を見つけてきなさい」
と、あたしに指令を下してきた。